特集 航空産業の未来を変える航空機エンジン電動化技術
ロケットエンジンターボポンプの電動化
ターボポンプの電動化とは
電動ポンプのシステム構成
ロケットエンジン、そして電動化と文字を並べてみると何を想像するだろうか?
大型人工衛星または国際宇宙ステーションへ物資を輸送するHⅡ-AまたはBなどの液体推進剤ロケットは、多くの電気系が組まれている。固体推進剤を持つイプシロンロケットも同様である。打ち上げ後の姿勢制御や固体推進剤を着火させるための電源、固体推進剤一段目をロケットから切り離すための装置と電気系統装置が使用されている。また、新型ロケットの液体推進剤ロケットエンジン(以降、ロケットは液体推進剤ロケットを指す)は、燃料(例えば液体水素、液体メタン、ケロシン系など)や酸化剤(例えば液体酸素など)である推進剤の流量制御に電動バルブが使用される。以上のようにロケットは、1960年代の黎明期から電動化と共に歩んできている。本稿では、近年の電動化の波に乗り、エンジンに備わるターボポンプの電動化にフォーカスを絞りお伝えする。
ターボポンプは、人の臓器で例えると心臓に似た機能を持つ機械である。ターボポンプは、動力伝達のシャフトとそれを支持する軸受や液漏れを抑える軸封シール、シャフトに回転力を与えるタービン、回転することで仕事をするポンプ、ポンプおよびタービン流路を確保し、かつ軸受外輪を支持するケーシングで構成される(図1)(1)。ターボポンプは、高速回転機械として推進剤タンクからポンプを通してエンジン噴射器へ要求される圧力、流量で供給する。本稿における電動化ターボポンプ(以降、電動ポンプ)とは、タービンを電動モータに置き換え、ポンプを直接駆動させる装置となる。実際に液体酸素用電動ポンプは、ターボポンプと同様にポンプ、シールシステム、軸受、モータとモータ制御に必要なインバータ装置や電源から構成される(図2)(2)。
キーワード:航空産業の未来を変える航空機エンジン電動化技術
表紙の説明:これは、1962年にドイツのギルデマイスター社で製造されたチャック作業用6軸自動旋盤のチャック部分(左)と刃物台部分(右)である。円周上に配置され、連続割り出しする6個のチャックに工作物を取付け、刃物台がまるで6台の機械のように軸方向に動いて加工を行い、1周すると1個の部品が出来上がる。
[日本工業大学工業技術博物館]