やさしい熱力学
第10回 エントロピーによる熱力学第二法則の解釈
1. はじめに
本稿では,温度とエントロピーの関係を図示した$T$-$S$線図により,視覚的に熱量のやり取りを理解するとともに,エントロピーを用いて熱力学第二法則を表現することにより,熱力学第二法則の理解を深める。
2. T–S線図
理想気体の状態変化やカルノーサイクルを考える時,$p$-$V$線図を使うことにより,状態変化に伴う仕事を視覚的に理解することができた。$p$-$V$線図と同様に,温度とエントロピーの関係を示す$T$-$S$線図を用いることにより,各状態変化における熱量のやり取りを把握することが可能となる。図10.1に,ある系の状態変化における温度とエントロピーの変化を太線で示す。この際,エントロピーの定義より,系に入る熱量は,
\[Q_{12} = \int_1^2 TdS \] | (1) |
によって求めることができる。すなわち,図中の斜線部分の面積が状態1から状態2の過程で系に投入された熱量となる。仕事と同様,熱量も$T$-$S$線図上での経路によって変化するため状態量ではないことが理解できる。
キーワード:やさしい熱力学
表紙の説明:これは、推力5tonターボファンエンジンFJR710形の排気口部分である。1975年に通商産業省工業技術院の大型工業技術研究開発制度によって開発された。ブラッシュアップしたエンジンは、航空自衛隊のC1輸送機をベースに開発された短距離離着陸ジェット機(STOL)飛鳥に4基搭載され500mで離着陸できた。
[日本工業大学工業技術博物館]