はじめに

今日の科学技術において、汎用計算機を用いたシミュレーション技術は欠かせないものとなっており、汎用計算機自体の性能の著しい向上に伴い、大規模計算が可能となり、複雑な物理現象を再現すること（複合現象の解析）も可能となりつつある。シミュレーション技術はサイエンスやエンジニアリングにおける重要な問題を解決するためのツールとして社会に提供されており、数多くの汎用解析ソフトウェアが開発されている。特に、製造業などの産業分野ではCAE（Computer Aided Engineering）と呼ばれ、目覚しく発展している。基礎的な研究のみならず、設計・開発における重要な課題を解決するためのツールとして幅広く活用されており、ものづくりプロセスにおいてシミュレーションは重要な役割を果たすようになっている。しかしながら、これまでは計算結果の品質保証に関する注目度は低く、シミュレーション結果の品質を保証する仕組みが構築されていないのが実情である。

本稿では、「ものづくりプロセス」に焦点を当て、シミュレーションを工学問題に適用する際に重要となる計算結果の検証と妥当性確認（Verification and Validation、V&V）^（1）の重要性と具体的な適用事例について述べる。

工学シミュレーションと製品開発