やさしい熱力学
第8回 熱力学第二法則とカルノーサイクルの特徴
1. はじめに
熱力学第一法則より,熱と仕事は形態が異なるものの,どちらもエネルギーの一種で相互に変換できるとともに,その総和は不変であることはすでに述べた。また,第7回で述べたように,熱機関は熱から仕事を取り出す仕組みであり,その熱効率は投入した熱量に対する取り出した仕事の割合として定義される。熱効率が1より大きくなる,すなわち投入した熱量以上の仕事を取り出す熱機関のことを第1種永久機関というが,そのような熱機関が存在しないことは,熱力学第一法則より明らかである。それでは,最も熱効率の高い熱機関はどのようなものであろうか。はじめに,第2種永久機関と呼ばれる,熱効率が1となる熱機関が存在するかどうかを考えてみる。また,熱力学の根幹をなす法則の一つである熱力学第二法則について学ぶ。
キーワード:やさしい熱力学
表紙の説明:これは、1925年頃に米国のヘンディー社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の主軸台の換え歯車装置部分である。右下には3段の送り速度群変換装置を装備し、さらに奥には12段のノルトン式送り速度変換装置を装備する。2つのレバー操作で簡単に36段変速できる。
[日本工業大学工業技術博物館]
表紙写真 北原 一宏