特集 スポーツ×ICT
東京オリ・パラに関連した競技自転車ウェアの開発
はじめに
TOKYO2020オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、多くの日本機械学会関係者が、その成功に向けて大きな役割を果たしていることは、よく知られている。また、機械学会スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス部門の関係者も、スポーツ庁のハイパフォーマンスサポート事業をはじめ、多方面と連携しながら共同研究・開発プロジェクトを実施し、競技力の向上や環境整備に貢献してきている。本解説では、それらの研究・開発の一つとして、トラックレースにおける競技自転車スキンスーツ(ウェア)の研究・開発プロジェクト例(1)を紹介したい。
自転車競技におけるトラックレースでは、走行中に発生する空気抵抗や路面抵抗といった負荷を低減するために多種多様な取り組みが行われている。ロードレース中の自転車と選手にかかる総抵抗のうち、約90%を空気抵抗が占め、そのうちの約70%は選手の体にかかる負荷だとされている。そのため、最大速度が時速70 kmを超えるトラック競技において、より空力的に優れたスーツを着用することは、最高速度を上げるため、またエネルギーを効率的に推進力に変えるためにも重要である。しかし、国内外において生地に着目して、スーツと空気抵抗の関係についての検討は極めて不足している。また、各研究・開発においてスーツの評価手法が未統一であり、再現性のあるデータを得られていない。さらに、さまざまな生地で構成されるトラック競技用のスーツに関して、走行条件やアスリート、走行中の姿勢といった要素について考慮し、競技パフォーマンスに最適化されたスーツを提案するための基礎的データは、ほとんどないのが現状である。
キーワード:スポーツ×ICT
表紙の説明:「これは、1930年代にドイツのファウター社で製造されたホブ盤のテーブルとワークアーバ部分である。穴加工済みの工作物を、テーブルの中心になるようにワークアーバに取付けて固定し、工具(ホブカッタ)と工作物の相対運動により歯形形状を創成しながら加工して歯車を作る。」
[日本工業大学工業技術博物館]
表紙写真 北原 一宏