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2020/6 Vol.123

表紙の説明:これは、出力10万kWレヒートガスタービンの高圧圧縮機部分である。1978年から10年間、通商産業省工業技術院のムーンライト計画(省エネルギー技術研究開発)の中で開発されたもので、全長21mある。東京電力袖ケ浦発電所に設置して運転研究の結果、総合熱効率52%を得た。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

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特集 人間を拡張する機械

Well-beingへの貢献を目指す自己拡張技術

安藤 健〔パナソニック(株)〕

自動化と自己拡張

したいことをする・ありたい状態になるための拡張技術

ロボティクスは、1980年頃から工場を中心として生産性向上、効率化のために活用が進められてきた。近年では、労働力不足も相まってロボティクスへの期待はさらに高まっている。現在、世界中のさまざまな領域で生産性向上、効率化を目的としたロボティクスの活用が進められている。我々も、工場内での作業を自動化するロボットや病院での薬剤自動搬送ロボット、農業分野における自動収穫ロボットなどさまざまな研究開発や事業を推進している。
これらの活動は日本や世界の経済成長を推し進め、先進国では物質的な豊さは非常に高いレベルで満たされるようになった。図1に緑色で示すように1 人当たりの国内総生産(Gross Domestic Product: GDP)は右肩上がりで成長してきた。一方で、赤で示した幸福に関する統計的な指標は横ばいもしくは若干の減少傾向にあるように見受けられる。これらの傾向は日本のみならず米国や英国など他の先進国における統計調査においても確認されている(1)。すなわち、ロボット導入とGDPには正の相関がありそうであるが、それにより人々が幸福(Well-being)と感じる状況にはなっていないということである。

図1 日本における経済成長と生活満足度の推移

今後、ますますロボット活用による自動化が進められていく中で、単純に生産性を向上させるだけではなく、人の幸福度、Quality of Life (QoL)を向上させるためのロボット活用を考える必要がある。では、「人のQoLを向上させるためには何が必要なのであろうか?」もしくは「自動化だけを追求してしまうと何が問題になるのであろうか?」このような問いに対して、我々はすべての行為を自動化するのではなく、自分でしたいこと・やるべきことは自分で出来るようにすることが有効であると考えている。そして、自分でしたいこと・やるべきことを自分でし続け、自分のなりたい状態になるために必要な技術を「自己拡張技術」と呼んでいる。つまり、生産性の向上という観点からの「自動化(Automation)」とQoLの向上という観点からの「自己拡張(Augmentation)」の二つの技術のバランスを上手く取りながら社会活動を推進していく必要がある。

自己拡張技術

量的拡張と質的拡張

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