特集 細胞培養時代の機械設備
CO2インキュベーターにおける過酸化水素除染装置の開発
はじめに
細胞培養とコンタミ防止の重要性
培養とは、微生物あるいは、多細胞生物の細胞や、組織の一部を人工的な環境下で安定的に育てる(増やす)ことである。細胞は大きく3種類に分類され、植物細胞、動物細胞、微生物などが挙げられる。
細胞を培養することで、生体内での生命現象を生体外で再現させることができ、研究者は比較的容易な操作で生体内での反応を模倣した実験系を組むことができる。生命現象のメカニズムの解明および、薬剤や外的刺激が細胞に及ぼす効果の評価などに利用することができ、さまざまな実験系、評価系が確立している。例えば、動物細胞の場合、組織の一部を切り出し、培養すると細胞増殖が起こる。
CO2インキュベーターは、微生物や細胞培養するのに適切な環境を提供する装置である(図1)。より良い細胞増殖を行うため、温度、湿度、CO2濃度を体内環境に近い状態に制御している(表1)。
図1 CO2インキュベーター
表1 細胞を培養するための環境条件
培養を続けていくと、細胞の代謝物(主に乳酸)が培地の中に蓄積し、培地が酸化してしまうが(pHが低くなる)、pHの変化を保持するために一般的な培地には、緩衝液として重炭酸ナトリウム(重曹)が含まれている。重炭酸ナトリウムはCO2 5%環境と平衡するように入っているため、CO2濃度の低い環境で培養すると、細胞培養に最適なpHは実現できない。また、水分が抜けると培地が乾燥し、培養に影響が出てしまうため、細胞培養には、「CO2濃度+加湿環境」で培養環境の変動を防ぐことが必要となる。
キーワード:細胞培養時代の機械設備
表紙の説明:これは、1931年に米国のブラットフォード社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の親ねじ(上)と送り軸(下)部分である。親ねじの根元には、ねじを切るときの指針となる手作りの薄鋼板製星形ダイヤルが付けられており、親ねじもしくは連動する歯車と噛み合わせて使う。
[日本工業大学工業技術博物館]
表紙写真 北原 一宏