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2020/5 Vol.123

表紙の説明:これは、1931年に米国のブラットフォード社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の親ねじ(上)と送り軸(下)部分である。親ねじの根元には、ねじを切るときの指針となる手作りの薄鋼板製星形ダイヤルが付けられており、親ねじもしくは連動する歯車と噛み合わせて使う。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

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特集 細胞培養時代の機械設備

多数の細胞サンプルの安定的な観察・評価を可能とする細胞培養観察装置 BioStation CT

能見 淑子〔(株)ニコン〕

はじめに

細胞培養とは

細胞培養とは、生体組織から取り出した細胞を、培養容器内で目的に応じて性質を維持させたり、分裂増殖させたり、分化させることである。組織幹細胞、間葉系幹細胞(MSC)に加え、近年、多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)が発見・開発されたことや、培地、培養容器や培養手法などの技術発展により、生体内における細胞や器官の特性・機能を生体外で再現させたり、あるいは疾患の状態を再現したり、また、細胞を大量に増やすことが可能となってきた。これらの培養技術の革新は、生物学や分子生物学分野における基礎研究はもちろんのこと、新たな薬を開発するための創薬開発や、再生医療分野の製品開発・製造の可能性を大きく広げている。

細胞を培養するためには、①細胞の生育環境条件(温度、pH、酸素、培地の組成)を最適なものに保つ、②増殖に必要な適当なスペースや足場を提供する、③装置の作動中に細胞培養環境へ外部から微生物が入り込まないようにする、といった点に気を付ける必要がある。培養中の細胞は、培地、培養容器、培養手法や培養環境が変化した場合、細胞の形状、大きさや動き(形態)や数に変化が表れる。病理診断の分野においても細胞の形態が評価指標として用いられていることからも分かるように、細胞の形態は、細胞の種類や状態によって特異的な特徴を示すことから、細胞の種類や状態を判断するうえで有効な評価指標である。培養中の細胞においても同様に、細胞の形態や数の情報から、細胞の生死、活性度、増殖(量、速度)、性質の維持あるいは変化、そして細胞以外の異物の混入有無を評価することができる。

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