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2020/5 Vol.123

表紙の説明:これは、1931年に米国のブラットフォード社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の親ねじ(上)と送り軸(下)部分である。親ねじの根元には、ねじを切るときの指針となる手作りの薄鋼板製星形ダイヤルが付けられており、親ねじもしくは連動する歯車と噛み合わせて使う。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

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特集 細胞培養時代の機械設備

iPS細胞大量自動培養装置(iACE2)

小林 豊茂〔(株)日立製作所〕

再生医療の現状

再生医療は研究フェーズから産業フェーズにシフト さらなる多様化へ

自らもしくは他人の細胞を原料などとして、高度な細胞培養技術を用いた加工処理で作製した細胞加工物を病変部へ移植する再生医療が、次世代医療として注目を集めている。細胞培養技術の発展に伴い、さまざまな細胞加工物が作製可能となり、日本においても2014年より法整備が進んだことにより、研究から臨床へのシフトが進み、従来では治療が困難であった病気の根本治療が可能となりつつある。国内においても実用化・産業化が進み、培養表皮や培養軟骨、心疾患のための筋芽細胞シートなどの細胞加工物が再生医療等製品として既に販売されており、更なる細胞加工物の製品化が加速している。特に近年では、細胞培養技術に加え、遺伝子編集技術も活用したCAR(Chimeric Antigen Receptor)-T細胞によるがん治療のための製品も上市をしている状況である。

このように再生医療が発展していくにつれ、一般的に細胞の増殖は有限であることから、原料等としての細胞の確保が重要な課題となっている。これに対して、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞された京都大学の山中伸弥先生のiPS(induced Pluripotent Stem)細胞(1)は、未分化状態で無限に近い自己複製能と多分化能を有していることから、原料等としての細胞の不足という課題を解決する可能性がある。具体的には、未分化iPS細胞を大量に増殖させて、目的の細胞へ分化誘導させることで、細胞加工物を製造するに足る量の細胞を得ることが可能になるということである。このことは、一般的に成熟状態では細胞が増殖し難いといわれる脳神経や心臓などの細胞加工物の製造を可能にするため、画期的である。

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