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2020/5 Vol.123

表紙の説明:これは、1931年に米国のブラットフォード社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の親ねじ(上)と送り軸(下)部分である。親ねじの根元には、ねじを切るときの指針となる手作りの薄鋼板製星形ダイヤルが付けられており、親ねじもしくは連動する歯車と噛み合わせて使う。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

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特集 細胞培養時代の機械設備

超音波技術を基盤とした細胞培養システム

竹村 研治郎(慶應義塾大学)

はじめに

細胞の大量生産が新たな医療産業を可能に

2007年にhiPS(human induced pluripotent stem)細胞が樹立されたことを契機に、培養細胞を利用した再生医療などへの期待が膨らんでいる。2050年には38兆円市場とも予想される再生医療市場(1)の実現に向けて、2013年の加齢黄斑変性症をはじめ、パーキンソン病、脊髄損傷、心不全などのhiPS細胞を用いた臨床試験が次々と実施されている。こうした治療法の開発に機械工学が貢献する余地はあまりない。しかし、治療法が確立された後の普及段階では、高品質な細胞の大量生産が必要となると考えられ、こうした課題はまさに機械工学が得意とするところであり、貢献すべき課題である。また、再生医療に限らず、動物実験に対する倫理問題が指摘される昨今は、創薬研究や薬効評価などにおいても培養細胞の重要性がますます増加している。こうした背景に鑑みて、細胞培養の自動化技術への期待は高い。本稿では、筆者らによる超音波技術を利用した細胞培養システムの取り組みを紹介する。

細胞培養のプロセスと自動化に向けた課題

機械工学が貢献すべき場所

細胞培養は増殖培養と組織形成に大別できる。増殖培養とは文字通り細胞の数を増やす培養である。一方、組織形成あるいは組織培養は多くの細胞が集合して何かしらの機能を発現する生体組織の形成や複数種類の細胞による共培養を指す。

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