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2020/5 Vol.123

表紙の説明:これは、1931年に米国のブラットフォード社で製造されたベルト掛け段車式普通旋盤の親ねじ(上)と送り軸(下)部分である。親ねじの根元には、ねじを切るときの指針となる手作りの薄鋼板製星形ダイヤルが付けられており、親ねじもしくは連動する歯車と噛み合わせて使う。
[日本工業大学工業技術博物館]

表紙写真 北原 一宏

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会長挨拶

会長退任のご挨拶

2019年度(97期)会長 森下 信

2020年1月から2月にかけて世界的に顕在化した新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの学会関連行事が中止または延期せざるを得なくなったことは、学会活動を先導する立場としては大変残念に思っています。しかし、会員の皆様の健康を維持することは何ものにも代え難く大切なことであり、学会の対応にご理解いただくとともに、感染の一刻も早い収束を願ってやみません。今後の状況は予断を許しませんが、会員の皆様におかれましては「新型コロナウイルスの生存戦略」を十分理解した上で、厳格な対応の継続をお願いしたく思います。

ちょうど1年前に日本機械学会定時社員総会で会長に指名され、大変な緊張感のもとで、皆様に会長就任のご挨拶を申し上げました。その際に、会長として行いたいことを3点あげました。

第1点は、全てのステークホルダーとしての会員の皆様に対して隅々まで情報を届けること、および会員であることの価値の提供です。学会に所属する意義の筆頭は、講演会における最新技術の情報獲得、学術誌での研究成果の公表、講習会での基本的および最新の学術に関する情報共有であると思います。講演会については年次大会から改革を進めていますが十分ではありません。従来と同様の企画をそのまま実行することは比較的簡単にできますが、社会環境も流動しておりますので、常にPDCAサイクルを回しながら改善する必要があると考えています。また学術誌については、6年前に一大改革が行われましたが、世界の流れについてゆけず、置き去りにされた感すらあります。インパクトファクターをはじめとする世界的な立場からみた本会の英文論文集はさらなる改善が必要です。和文論文集については、過去あれほどまでにレベルの高かった論文集が、現在では投稿論文の激減によって様々な問題点が浮き彫りになっています。編集理事会を中心に修正するべき点を明確にして、現在、鋭意検討を開始したところですので、今後の継続的な検討を期待しています。さらに講習会については、基盤的知識から先端的話題に至る系統的な企画を、これまでのような部門の縦割りではなく、学会全体として取り組む必要があると思います。

第2点目は若手人材の育成でした。若手の会を昨年度から常設委員会にして様々な施策を実行しておりますが、まだ若手研究者、技術者を惹き付けるに至っておりません。若手がのびのびと学会活動に参加できる雰囲気作りも大切です。また一方で、シニア会の活動が伸びてきております。現実的には若手、若手とお尻をたたくのではなく、シニアの方々が若手を取り込んで学会として一体感をもって活動の幅を広げることが求められると思います。

残る第3点目がアクションプランの着実な実行でした。第1点目も、また第2点目もアクションプランに盛り込まれていて、単に抜き出して宣言したに過ぎません。その中でひとつだけお話ししますと、部門の再編について、大阪大学の梶島岳夫先生を委員長として新部門制検討委員会を昨年度から立ち上げて、その答申に基づき、本年4月から3年間の試行を行うことになりました。その後は必要に応じて修正し、本格実施の運びとなっております。関係の皆様には大変なご尽力をいただきました。

 

会長としての活動にあたり、理事をはじめとする関係各位から全面的なご協力をいただきました。また、事務局の方々の献身的なサポートにより、充実した会長としての一年を送ることができました。この場をお借りしまして、あらためて御礼申し上げます。
日本機械学会は、今更申し上げるまでもなく日本を代表する学術団体であり、また国際的にも世界の学術を先導する立場にさらに近づくことが求められます。この活動を将来にわたって維持するためには、会員の皆様のご協力なくして成り立つことではありません。今後の継続的なご協力をお願いして、私の退任の挨拶とさせていただきます。

写真:北原 一宏)

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