特集 複数性能を扱う最適化設計技術
複数性能最適化設計技術の最前線
前回、最適化設計技術の特集を企画したのが、2014年5月号だった。好評を頂いたということで、6年ぶり2回目となる企画を進める運びとなった。日本機械学会では、分野を横断して「最適化シンポジウム」が隔年で実施されている。前回が2018年に開催されたので、順調に進めば2020年12月に開催される予定である。最新動向は本シンポジウムのプロシーディングで大まかな流れは掴むことができるので参考にしていただきたい。
さて、今回も2014年の特集と同様に、「スピーディな製品開発に加え、使用環境ストレスに耐え、小型、軽量、低コスト、高性能な製品を実現するには複数性能最適化設計技術が不可欠である。設計プロセス論と最適化アプローチの最前線を紹介する。」という視点で近年の実用化の動向を踏まえていくつかの特徴的な事例を紹介していく。今回は特に「複数性能」という視点を新しく取り上げた。「マルチフィジックス」とも少し異なり、適切な表現は何だろうと考えたが、代替案は他に浮かばなかった。表題からもわかるように、実事例が増えてきたこと、多目的化によって対象を広げてきていることが、近年の研究の動向の特色である。簡単に今回の掲載記事を紹介する。
まずは「プロットプランの最適化」について(本誌P.6)。分類としては「板取問題」に分類することができるものであり、最適化が困難な問題とされていた。この問題に対して、性格の異なるいくつかのヒューリスティックサーチを導入することで十分な解を導いている(1)。プロットプランは、工場の配置にとどまらず、LSIのチップの配置、エンジンルームの機器の配置などさまざまな発展が考えられ、「プロットプラン最適化に関する調査研究分科会」も開催されておりご興味があれば参加していただきたい。
キーワード:複数性能を扱う最適化設計技術
表紙の説明:
1972年スイスのベヒラー社製の主軸台移動形棒材作業用単軸自動旋盤の刃物台部分である。カム機構により放射状に配置された5種の刃物が、半径方向に順次動く。刃物を軸方向に送る代わりに、工作物を中央のガイドブッシュから送り出しながら加工するため、工作物のオーバーハングが無く、高精度な加工ができる。
表紙写真 北原 一宏
撮影地協力 日本工業大学 工業技術博物館