令と和の産学連携
ベテランコーディネーターの信念
企業と大学の壁を越えるカギは、人と人との「信頼関係」
産学連携には、大学と企業というカルチャーも目的も異なる組織間の橋渡しを行うコーディネーターの存在が欠かせない。一方で、裏方の仕事であるだけに、なかなか日の目を見ることがなく、その実態がわかりづらい仕事でもある。そこで今回は、スズキやヤマハなど60社以上の企業が所属する静岡大学産学連携協力会の事務局長として、浜松市を中心に静岡県内外の産学連携をコーディネートする河合文雄氏に話を聞いた。河合氏は、素材メーカーでの技術開発や営業統括の経験を活かし、現在は有限会社ホープ・マネジメントの代表取締役社長として、産学連携コーディネートのほか、経営コンサルティングや技術開発支援など、さまざまな事業を手掛ける。産学連携をうまく推進する秘訣とは何だろうか。裏方の視点からその答えを探る。(聞き手 周藤 瞳美)
20代の頃から“当たり前”にやってきた産学連携
——河合さんは長年のあいだ産学連携に携わってこられたそうですね。
有限会社ホープ・マネジメント 取締役社長/
静岡大学産学連携協力会 事務局長
河合 文雄 氏
大学との連携は、私が20代の頃、企業に務めていたときからずっと取り組んできたことです。当時、大学の活用はトップ命令だったんですよ。なぜなら、ないものはあるところに行って借りてこなければならないから。ですので、産学連携自体は特に目新しいことではありません。産学連携という言葉がまだ普及していなかった1980年代頃には、中小企業庁を中心に「異業種交流」という名目で推進されていましたね。中小企業がそれぞれの特色を持ち寄って大企業に対抗していくことがその主な目的でした。
キーワード:令と和の産学連携
表紙写真 北原一宏
撮影地協力 日本工業大学 工業技術博物館
表紙の説明: これは、1955年頃まで町工場で使われていたベルト掛け段車式の普通旋盤用の換え歯車である。今は電動機が付いた全歯車式であり、レバーやダイアルを操作するだけで簡単に送り速度やねじのピッチを換えることができるが、当時は表を見て、その都度、歯車を付け替える必要があった。