特集 機械・インフラの健全性評価の現状と展開
土木構造物の劣化とメンテナンス
土木構造物の高齢化
人々の生活や経済活動を支える土木構造物が、今後急速に老朽化することが懸念されている。本年2020年に東京でオリンピック・パラリンピックが開催されるが、前回1964年の東京オリンピックにあわせて整備された首都高速道路1号線など、高度成長期に整備したインフラが、今後一斉に老朽化してくる。
表1に、建設後50年以上経過する社会資本の割合を示す(1)。我が国には橋長2m以上の道路橋が約73万ある。このうち建設後50年を超えるのは2018年3月時点で約25%に対し、2023年には約39%、2033年には約63%と急増する。構造物の種類により進行には差があるものの、多くの土木構造物が急速に高齢化していく。
高齢化自体は、人の長寿命化と同じで、長生きする構造物を長く使っているともいえる。しかしながら、人が高齢化すると病気の割合も増え、医療費が増加する。土木構造物についても、構造物の劣化により補修の費用が増加したり、また、重大な損傷による道路の通行止めなどの社会的な影響が生じたりといったリスクが増加する。更新のための費用も必要となっていく。
本稿では、土木構造物のうち、筆者が担当している道路構造物をとりあげ、そのメンテナンス状況と新技術への期待を述べる。
表1 建設後50 年を経過する割合(1)
法律に基づく道路構造物の点検
キーワード:機械・インフラの健全性評価の現状と展開
表紙写真 北原一宏
撮影地協力 日本工業大学 工業技術博物館
表紙の説明: これは、1955年頃まで町工場で使われていたベルト掛け段車式の普通旋盤用の換え歯車である。今は電動機が付いた全歯車式であり、レバーやダイアルを操作するだけで簡単に送り速度やねじのピッチを換えることができるが、当時は表を見て、その都度、歯車を付け替える必要があった。