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2020/1 Vol.123

表紙写真 北原一宏
撮影地協力 日本工業大学 工業技術博物館

表紙の機械は、本田技研工業が1959年に4輪車用エンジンの歯車を製造するために同社の鈴鹿製作所に設備導入した6ステーションを有するロータリ形のホブ盤で、米国のリーズ・ブラッドナー社製である。この工作機械は、日本の自動車産業の発展に大きな役割を果たした機械と言える。

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特集 プロフェッショナルとしての技術者 -子供たちが夢見る職業か?-

まえがき

山本 誠(東京理科大学)

機械技術者の地位向上を目指して

今から20年後、2040年の日本や世界はどのようになっているのであろうか。国連は、2015年9月の国連サミットにおいて加盟193カ国が2016年から2030年の15年間に達成するための持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)を掲げた。この目標では、すべての人が平和と豊かさを享受できる社会の実現を標榜し、貧困の撲滅、すべての人に質の高い教育の提供、産業と技術革新の基盤形成など17の目標を掲げ、その実現を目指している。また、2018年1月に、内閣府は第5期科学技術基本計画を策定して「Society5.0」の推進を提唱し、2019年6月には、「経済財政運営と改革の基本方針2019~『令和』新時代:『Society5.0』への挑戦~」が閣議決定されている。

Society5.0は、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く、新たな社会のことを指しており、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムを開発することによって、経済発展と高齢化や地方創生といった社会的課題の解決を両立する「人間中心の社会」の実現を目標としている。このような社会の実現が人類にとって理想的なのか、あるいは日本人や人類全体に幸福をもたらすのかは、今後の議論を待つところであるが、科学技術によって20年後には現在とはまったく異なる社会が出現していることは間違いないであろう。筆者にはどのような社会が出現するかは分からないが、「もの作り」がなくならない限り、技術者は社会にとって必要不可欠な存在であることは変わらないと思われる。しかし、技術者が社会から尊敬され、若者にとってあこがれの職業となるためには、より優れた人材を引き付け、高度な教育を通じて能力を開花させ、さらなるイノベーションを起こしていくことが求められる。このためには、より優れた人材の育成と個々人の能力を最大限に活用する社会システムの構築が必要である。

日本機械学会のイノベーションセンターは、技術者の人材育成・活用、技術者資格の認証・認定、産業界の技術開発・生産活動を支援することにより、機械工学分野のイノベーションを牽引し、産官学の連携強化、学会事業の拡大、学会プレゼンスの向上などを目的として、2009年度から7委員会体制で活動を続けてきた。2019年4月からは、経営企画委員会の答申に基づき、各種委員会のミッションに応じた組織化による事業強化を図り、理事会直属となることで運営効率を高めることを目的として組織改編が行われた。特に、イノベーションセンターの技術者教育委員会と人材活躍・中小企業支援事業委員会を統合して「人材育成・活躍支援委員会」を発足し、以下の活動を総合的に推進することとなった。

(1)機械工学技術者の能力開発・継続教育を図り、国際的に通用する技術者を育成するとともに技術者の地位向上を図る活動を行う。
(2)地域産業振興への寄与を目指した技術者教育や技術相談など、シニアが活躍する場を創出するための活動を行う。
(3)初等・中等および高等教育における技術者教育について、関係する教育者も含めた検討を行う。
(4)(1)〜(3)に関する施策提言を行う。

すなわち、小中学生からシニアに至るすべての階層の人材をターゲットとして、各種人材育成施策を推進し、技術者の地位向上に資することを究極の目標としている。

このような人材育成に関わる諸動向に鑑み、本特集「プロフェッショナルとしての技術者~子供たちが夢見る職業か?~」は、職業としての技術者の現状を客観的に捉え、日本機械学会のミッションとして技術者の育成、技術者の地位向上のために何をなすべきかを他学協会とともに考える機会を提供するために企画されたものである。

技術者資格としてプロフェッショナルエンジニア(米国)、チャータードエンジニア(英国)、APECエンジニア(アジア)、技術士(日本)を取り上げ、その現状を解説する。次いで、女性技術者、JABEEに関して現状と課題が解説される。

本特集が、技術者の育成や地位向上の現状を把握し、将来の技術者のあり方を考える一助となれば、また技術者という職業が子供たちの夢となってくれれば幸いである。

また、本特集にあたり、電気学会、電子情報通信学会、日本技術者教育認定機構(JABEE)、日本技術士会、IMechEからご協力をいただいた。この場を借りて、御礼申し上げます。


<フェロー>
山本 誠
◎日本機械学会 人材育成・活躍支援委員会 委員長
◎東京理科大学 教授
◎専門:機械工学、流体工学、数値計算

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