特集 異材接合技術の最新動向
鋼構造物のCFRP接着補修・補強
はじめに
国内外を問わず、鋼橋では、腐食や疲労などの損傷が数多く報告されている(1)。鋼構造物の腐食や疲労損傷を補修する場合、高力ボルト接合によって当て板添接補修される場合が多い(図1)。2000年以降、腐食損傷や疲労損傷した鋼部材の補修に、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を用いた接着工法が適用され始めている(2)(3)。CFRP接着補修の一例を図1に示す。CFRP接着補修では、鋼部材にボルト孔を設ける必要がないため、従来の高力ボルトを用いた当て板工法よりも簡易かつ迅速に施工できることが報告されている(2)。また、CFRPが鋼と比べて軽量な材料であるため、死荷重の増分がほとんどなく、現場でのハンドリングが良いこと、また、高力ボルト当て板工法と違い、補修後に形状がほとんど変化しないことなどの利点もある。しかし、CFRP接着補修では、鋼部材に荷重が作用すると、接着端部近傍の接着剤内に応力集中が生じることが知られており、荷重の大きさによってはCFRPが脆性的にはく離することが懸念されている。また、接着剤を介して鋼部材からCFRPへ荷重が伝達されるため、CFRPの端部では十分に荷重が伝達されないことを考慮した定着長を設ける必要がある。これまで実橋のCFRP接着補修の適用に際して、実際の補修・補強を模擬した鋼部材にCFRPを接着し、荷重の伝達や設計荷重でCFRPがはく離しないことが確認されてきた。また、高速道路の鋼橋に対して、文献(4)の炭素繊維シートによる鋼構造物の補修・補強工法設計・施工マニュアルが2013年に発刊されている。このように、劣化した鋼構造物のCFRP接着補修・補強が適用され始めていることを受け、土木学会複合構造委員会では、鋼構造物への補修・補強に対する設計指針・施工指針を含めた「FRP接着による構造物の補修・補強指針(案)」(5)が2018年に発刊された。本稿では、FRP接着による構造物の補修・補強指針(案)に規定されている、鋼部材に対するCFRP接着補修・補強に関する項目の一部を紹介する。さらに、鋼構造物のCFRP接着補修の際の熱応力の低減工法、VaRTM成形法を用いた鋼桁端部のCFRP接着補修法、トラス格点部のガセットプレート腐食のCFRP接着補修についても紹介する。
図1 トラス橋斜材のCFRP接着補修の例
キーワード:特集
【表紙の絵】
二人のりいすロボット
木原 友里 さん(当時7歳)
おじいさんとおばあさんがのっていろいろなところに行けるイスロボット、シートベルトつき。下から足がでてそうじをしながらおもったところにいける。かいだんものぼれる。