会長挨拶
新しい時代の魅力ある エンジニアソサエティの実現をめざして
2018年度(第96期)
会長 佐々木 直哉
本会においては、一昨年、創立120周年の節目の年となりました。
2018年度は、節目年の次のステップとして、“魅力あるエンジニアソサエティの実現に向けて”というコンセプトで、3つの重点方針として、(1)若手技術者にとっての魅力度向上、(2)組織力強化のための取り組み加速、(3)10年ビジョンに基づくアクションプランの着実な実行、を掲げ、更なる発展のための色々な施策に関して、昨年新たに組織した経営企画委員会を中心に、関係部署の協力のもと、これらの課題に対して具体的な解決策を検討してまいりました。
その結果、特に組織力強化の観点で、2019年度から、イノベーションセンターと標準・規格センターの廃止により、特に学会の本部事業を強化するために組織の再構築を行い、さらに、人材育成・活躍支援や技術ロードマップ構築という将来の技術動向を見据えた活動を独立化することで、学会としての魅力ある活動を強化できる新たな体制でスタートすることになります。
2018年度の主な行事としては、2018年9月に関西大学にて、“多様化する社会・技術への機械技術者の挑戦”と題して、年次大会を開催しました。お陰様で多くの方に参加いただき、盛況に終わることができました。また、「機械の日」行事では、従来とは視点を変えて、広く一般の方の参加を狙ったオープンなイベントを秋葉原という地で実現しました。2019年度は、さらに新しい視点で開催すべく、計画立案を継続していきます。また、2019年3月には恒例のメカジョ未来フォーラムを開催し、多くの学生、企業に参加していただくことができました。また、各支部、部門、委員会、研究会におきましても、多様な活動を推進することができました。
一方、大きな課題として、会員数における学生員数の増加傾向は継続してありますが、残念ながら、企業会員の減少の動きを抑えることができておらず、産業界から見た魅力ある学会としての産学連携強化の施策を具体化し検証するまでは至らない状況です。このため、機械学会の魅力をもっと良く知っていただき、学会の中心的存在である各部門や支部などが新しい動きや活動に日々挑戦している情報をこれまで以上にHPのリニューアルや分科会活動の情報公開などを通して普及展開をしていく広報戦略の推進が望まれます。
さらに、新たな気づきや交流が生まれる産学連携強化の施策としては、2019年度の秋田大学で開催される年次大会にて、多くの企業や大学の方に参加いただけるような、さまざまな行事企画を立案しました。チャレンジ制度の雛形となる新たな企画も若手の会を中心に検討し具体化することができ、2019年度以降に試行をして、交流の場としての機能を強化していく予定です。他学会との連携も積極的に進めていく素地もできてきました。
これからの時代、新しい情報技術や最先端科学の急激な進展に伴い、社会や学会を取り巻く環境は複雑化しております。一つの方向性として、AI、IoT、Society5.0やSDGsなどの大きな動きや技術の変化・進化の中で、人や社会と機械・機械システムの関係性において、総合工学としての特徴を活かした機械工学アプローチに基づく、“全体に気を配り、異分野をつなげる方向感覚やデータ、感性を通した多様な相互作用”が「新たな価値」を生み出すきっかけになると思われます。他方、これまでの複雑現象解明に根ざした「機械工学分野の基盤技術」としての専門性の深化もさらに推進することが大事です。これらに対して、社会・産業貢献の実現性向上も含め、“日本機械学会の強みは何か”を自問自答しながら、技術者にとって魅力がある、新しい技術や手法、考え方の発信とその手がかりを掴める交流の場提供、それに対応した人材育成施策などが、これまで以上に取り組むべき課題だと考えられます。
また、誠に申し訳ありませんが、会長の任務として緊急の課題である、魅力ある学会としての各事業活動は、小生の力不足により不十分な点がいくつか見られ、2018年度決算は6年ぶりの赤字という結果になってしまいました。しかしながら、2019年度に向けては、新たな事業の創生、本学会に所属する関係各位がさらなる協調をして活動を進めていける新たな仕掛けや体制が少しずつできていると思いますので、ぜひ期待をしていただければ幸いです。
新年の挨拶でも述べさせていただきましたが、昨年、経済産業省が実施した社会人を対象とした理工系人材の需供実態アンケート調査によると、技術系職場で必要とする専門分野、学び直したい分野において、機械工学のニーズが他の分野に比べ最も高く、次にハード・ソフト、プログラムと続き、一方で5年後に技術人材が不足する分野も機械工学が一番という報告がなされており、より一層、機械工学の技術者集団として、実学としての活用に基づく多様な価値創出や課題解決による社会・産業貢献に寄与するためのさまざまな学会としての取り組みをこれからも引き続き検討していかなければならないと実感しております。
ここで期待されているものは、従来からの基礎、基盤技術としての機械工学に加えて、新しい分野、異分野の研究や技術との連携、融合も視野に入れた、これからの多様なニーズに対応できる進化した機械工学だと思います。
最後になりますが、本会会員ならびに理事会、支部、部門、各委員会、事務局の皆様のこれまでのご支援、ご努力に厚く感謝申し上げます。
これからも森下信新会長のもとで一致団結し、本会のさらなる発展を祈念しております。
関係各位の皆様のご協力、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
キーワード:会長挨拶
【表紙の絵】
二人のりいすロボット
木原 友里 さん(当時7歳)
おじいさんとおばあさんがのっていろいろなところに行けるイスロボット、シートベルトつき。下から足がでてそうじをしながらおもったところにいける。かいだんものぼれる。