特集 二酸化炭素分離回収と貯留・固定および利用技術
商用規模CO2回収装置の開発
はじめに
一般的にCO2は、炭酸飲料や冷却用ドライアイス、溶接用シールドガスなどで幅広く使われ、化学工業分野では肥料やメタノールなどの原料として用いられている。また北米では、原油増産を目的としたEOR(Enhanced Oil Recovery)用途としてCO2が多く利用されている。このようにCO2は人間の経済活動に有用な面を持つ一方、近年では地球温暖化の原因となる温室効果ガスとして取り沙汰されることが多い。
2015年12月“国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)”にてパリ協定が採択され、2016年11月に発効された。このパリ協定は、2020年以降のCO2を含む温室効果ガス排出削減に関する新たな国際的枠組みである。また、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、2018年10月に、温室効果ガスの排出ペースが現状のまま進むと、早ければ2030年にも世界の平均気温は、パリ協定が努力目標とする産業革命前よりも1.5℃上昇するとした特別報告書を公表した。1.5℃の気温上昇は、世界で気候変動を激化させ、自然破壊の多発化を招くとされている。気温上昇が2℃を超えた場合は、加速度的に地球環境に多大な影響を与えるというホットハウス現象(1)というものも報告されており、気温上昇を2℃未満に抑えて安定させることは急務である。
上述のように、地球温暖化への世界的な関心の高まりとともに、化石燃料の燃焼などによって排出されるCO2を回収し、地中に貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)が注目されている。国際エネルギー機関(IEA)は、2016年11月に発行した20 Years for Carbon Capture and Storageの中でCCSの重要性を述べており、パリ協定の目標を達成するため、とりわけCO2排出量の大部分を占める発電部門への適用が期待されている。また最近は、回収したCO2を有効活用するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)の研究が活発化しており、CO2回収の経済性を高めるものとして注目されている。いずれにしても、CO2回収装置を今後広く普及させるためには、設備費・運転費の低減と技術の信頼性向上を両立させることが鍵となる。
キーワード:特集
【表紙の絵】
さがせ!タカラモノグラ
後藤 快 くん(当時7 歳)
タカラモノグラは化石や宝石をみつけるきかいです。
そうじゅうしているぼくは、きょうりゅうの化石やキラキラしている宝石をみつけようとわくわくしています。