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2019/1 Vol.122

【表紙の絵】
「素敵な薬を作る機械」
杉平 会利 さん(当時5歳)

私が薬剤師さんになったら、「素敵な薬を作る機械」を使って、患者さんの好きな色や形、好きな味や香りのする薬を作りたいです。虹色の薬を飲むと、心に虹が架かり晴れやかな気分になります。病気になったら素敵な薬を飲んで、心も体も元気になって欲しいです。

バックナンバー

特集 Diversity & Inclusion

女性技術者の活性化に向けたYKKの取り組み

喜多 和彦〔YKK(株)〕

ダイバーシティ経営の背景と狙い

強い「森林集団」の実現

YKKの創業者吉田忠雄は、「若い木も経験を積んだ木も、背が高い木も低い木も、それぞれの木が個性を活かして自律的に成長すれば、組織は森林のように活力に溢れ社会に貢献できる」という考えを持ち、会社が目指す姿を「森林集団」と表現した。これには正にダイバーシティと同じ考え方が含まれている。

ダイバーシティ推進は重要な経営戦略(事業競争力強化)の一つと位置づけ、性別・国籍・障がいの有無など「見かけの違い」だけでなく、価値観や経験など「内的な違い」にも目を向け、社員一人ひとりの持ち味を活かすことで、組織のパフォーマンスを高めることを目指している。その活動の切り口は、女性、外国籍、障がいの三つである。本稿では、女性活躍推進にフォーカスし、取り組みを述べる。

具体的取り組み

女性社員のキャリア開発支援

女性のさらなる登用においては、将来的にリーダーとなる母集団の形成のため、2013年より係長級一歩手前の女性社員(職種問わず)を対象に、選抜型で「キャリアデザインを描くための『にじいろ研修』」を実施しており、年間約30人が受講している。本研修は、先輩社員をロールモデルとして示すことで女性の活躍意識を高めるとともに、キャリアビジョンの認識による、課題の明確化を目指した内容としている。受講生の約半数は一段上の等級へ昇格しており、各職場で女性リーダーが着実に増えている。

女性技術者の採用強化と活躍のための環境づくり

女性活躍推進を行ううえで、特に技術系に女性社員が少ないため、採用の強化を行った。機械系・電気系学科からの採用が中心となる技術系職種では、そもそもこの分野を専攻する女子学生が少なく、新卒・女性技術者採用比率は1割に満たず、苦戦していた。そこで、当社が女性技術者支援を行う企業であることを外部へアピールするため、女性技術者を掲載した新聞広告展開および「YKK Group Woman Engineer」と題したサイトを開設するなど認知度向上の施策を講じた。これらの活動と並行して、インターンシップ施策も強化を行うことで、現在は女性技術者の採用比率は2割近くにアップした。

2016年には国立大学法人金沢大学と、2017年には公立大学法人富山県立大学も加わり、両大学と連携し、女性技術者・研究者の育成を推進する取り組みを実施している。

これは、ものづくりにおける女性リーダーを促進し、北陸地域にダイバーシティ研究環境を実現する取り組みを産学が一体となって推進するものであり、2016年10月より大学との連携講座(共同研究指導)やシンポジウムの開催などを実施している。

また、技術者を対象として、技術者の活性化・モチベーション向上、女性技術者の育成を目的として、これまで2回の講演会・座談会を実施している。2017年度は、日本機械学会・会長(当時)の大島まり教授に、2018年度は九州大学・山西陽子教授に講師をご担当いただいた。大島教授からは自身のキャリア形成(経歴や想い)、女性研究者・技術者に対して思うこと(アドバイス)などを、また山西教授からは、新たな挑戦に関する考え、研究に対するモチベーション・目標設定に関してお話しいただき、当社の技術者へ新たな気づきの提供につながった(図1)

図1 山西教授との座談会の様子

今後の取り組み

社員一人ひとりの持ち味を発揮できるよう、女性技術者の技術開発力向上や、リーダーへの登用促進の基盤づくりを通じて、女性技術者が高い目標に向かって自らを磨き続けられる環境を整え、その女性技術者の活躍でさらに会社全体を活性化させていく。


 

喜多 和彦

◎YKK(株) 専門役員 工機技術本部

◎ 専門:金属材料

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