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2018/12 Vol.121

よごれ0(ゼロ)ロボッ子
村越 心 さん(当時9 歳)
この‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’は、体が掃除機のようになっています。手は掃除のアイテムが出てくるようになっています。口はゴミを吸い込めるようになっています。そして、吸い込まれたゴミは大きなおなかに入り、それが‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’のごはんとなります。目はセンサーが付いていて部屋のよごれがあるとすぐに気づけるようになっています。足はモップで水などをふけます。モップは自由に動きます。頭にはアンテナが付いていて、電気に近づくと体全体が気づき、動くようになっています。これが‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’の仕組みです。

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機械遺産のDNA

塗装環境を改革したエアレス塗装機とその展開

図3 コンパクトエアレスAPG 型(右)と国産エアレス一号機のガン(左)(機械遺産第92号)

エアレス塗装機国産化への挑戦

エアレス塗装機発明者との一期一会

塗装は、製品の保護・美観向上・特殊機能の付加などを目的に、日用品・輸送機・構造物をはじめ多くの製品に適用され、その製造に欠かせないものである。

しかしながら、旭サナック(株)(以下、当社)が塗装機械製造に着手した60年前の塗装環境は0.5 MPa以上の圧縮空気により塗料を霧にするエアスプレー塗装方式がほとんどであった。取り扱いやすさの反面、吐出した塗料ミストの約80%を空中に飛散させ、生産性が低く、周辺環境および塗装作業者の健康を害していた。

このエアスプレー塗装の塗料ミストまみれの作業を改善するべく、1947年フォードの塗装工であったアメリカ人の発明家ジェームス.A.ビーデ氏は、エアレス塗装方式を考案した。

エアレス塗装とは、特殊な孔をカットしたノズルから専用のポンプで加圧した塗料を直接押し出して霧にする方式で、塗料ミストの飛散を抑え、一度に塗料の膜を厚く着けることが可能で、生産性向上とともに、作業者への塗料付着や吸い込みなど、身体的負担を軽減させるものである。

旭大隈産業(現 当社)で当時主力事業であった繊維産業から機械産業への転身を模索していた、常務取締役の甘利祐三は、偶然その発明の経緯と、日本でビーデ氏が技術提携先を探しているという話を聞きつけ、今後成長事業にできると確信し、多方面に働きかけ1958年同氏を日本に招いた。

すでに日本の提携先を他社で決めていた様子のビーデ氏であったが、滞在期間中寝食を共に行動し、この事業へ取り組む熱意を「一期一会」の気持ちで伝え続け説得し、同氏帰国の際に「世を益し、人を愛する仕事をしよう」「お前と俺は同じ船に乗ったのだ」との言葉とともに、日本での特許実施権を獲得した。

原理やメカニズムの伝授を受け、着手した国産化は、機械設計や素材選定および調達など、難問が山積みであったが、試行錯誤の末1958年内に国産一号機AP型が完成図1、1959年大手楽器メーカーにピアノ塗装用として採用された図2。塗装回数を8回から2回と75%削減し、生産性を大幅に向上させるのと同時に、塗料飛散を抑え無駄なく塗料が付着することで塗料使用量を30%節約し、コストダウンと現場環境の改善に貢献した。

図1 国産エアレス一号機製品検査

 

図2 国産エアレス一号機塗装現場

エアレス塗装機の市場拡大

ユーザーニーズによる新型エアレス塗装機の開発

ようやく製造・販売にこぎ付けたエアレス塗装機は、その性能と効果が次第に塗装業界に認識され、大手メーカーを中心に採用されるようになった。しかし、エアレス塗装機AP型は、塗料を加温し粘性を下げ、霧化を促進させる「ホットエアレス」方式で、大型の塗料ポンプと電気を使用する塗料加温装置を台車に搭載する必要があった。そのため、使用できる場所が限定され、価格も当時55万円(大卒初任給約1.1万円時代)と高価なこともあり、普及が進むにつれ、もっとコンパクトで手軽に使えるエアレス塗装機を求める声が、多くのユーザーから寄せられた。

コンパクト化には加温装置の省略が不可欠であり、社内では反対もあったが、これらの声に応え開発を決断し、「性能は5倍・価格は5分の1」を合言葉に、塗料加温装置を省略した「コールドエアレス」方式の、「コンパクトエアレスAPG型」図3・機械遺産第92号)の開発に着手した。

士気の高い技術陣は昼夜を徹し、仕様・設計・生産工程などを検証した。1962年秋に発売すると、その反響は大きく、エアレス塗装機の普及を加速させ、一年後には毎月500台を出荷、これまで主体であった特定製造業への納入から、一般塗装業まで市場は広がり、塗装現場の改革を進めた。

エアレス塗装機の新分野展開と将来

エアレス塗装技術と塗装外分野の進化

エアレス塗装機はその後も、塗料や塗装ニーズの多様化に伴い、造船業での大吐出量に対応する、大型・大容量ポンプ、町中などの建築現場で使用を簡便にする電動モーターやエンジン駆動式のポンプ、主剤と硬化剤を指定の比率で正確に圧送し混合しながらスプレーする二液塗料エアレスポンプなど、開発を行い塗装分野で進化を続けた。

また、塗装以外の分野でも、液体を高圧で霧状にして噴射する技術をより精密に追求し、液晶ディスプレイのガラスやICチップなど半導体の素材であるシリコンウェハーの洗浄に展開し、エアレスの技術で超高圧噴射される微小液滴化された洗浄液(マイクロジェット)は、従来方式に比べ洗浄性が高く製品不良率低減と洗浄液使用量の削減効果により市場で普及、新たな市場を開拓した図4

エアレス発明者の出会いから60年、塗装機械事業を続け、塗装現場の問題解決に取り組んできたが、今後も機械メーカーの最大使命はユーザーの現場で発生する問題点や困りごとを解決することと考え、これからも当社はユーザー個々のソリューションに取り組んでゆく。

図4 シリコンウェハーの超高圧マイクロジェット洗浄風景


 

間宮 幹雄

◎旭サナック(株) 代表取締役社長

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