ほっとカンパニー
TPR(株) 御柱祭で育まれた団結力で、諏訪から世界シェアトップへ
日本にはこんなすごい会社がある
リングメーカーとして創業したのは1939年。日本製のピストンリングが製造されてまだ間もない頃だった。創業したTPR は、戦時中に長野県岡谷市に疎開し、以来この地に拠点を構えてきた。2011年、世界展開を見据え、社名の帝国ピストンリングを現在のTPRに変えた。
同社の製品の二本柱が、パワートレイン製品であるピストンリングとシリンダライナである。ピストンリングは長野県岡谷市で、シリンダライナは山形県寒河江市で製造され、いずれの製品も、他の追随を許さない技術開発力を誇る。とくにシリンダライナでは国内シェアは約70%、乗用車に限れば約85%に及ぶという。また、北米・南米・日本・中国・ASEAN・欧州の世界6極に海外拠点を置き、世界シェアは約60%を占め世界一の生産量を誇る。
社名のTPRは帝国ピストンリングの頭文字を取っただけではない。その由来は「Technology(技術力)、Passion(情熱、とことん)、Reliance(信頼)」の三つの頭文字から。「優れた技術力と情熱をもって価値ある製品を創造し、お客様の信頼に応える」その使命感が込められている。「我が社は、TPRを文字通り発揮して製品開発に当たっています」と同社技術企画室の伊藤寿哲は胸を張る。
エンジンの摩耗のカギを握るピストンリング
創業以来手がけているピストンリングは、エンジン内部のピストンの上下運動を、ピストンとシリンダライナ間で支える部品であり、大きく四つの機能を持つ。シリンダー内の気密をピストンとシリンダー壁との間で十分に保つための「燃焼ガスのシール機能」、焼き付きを防止するために、常に必要最小限の潤滑油膜を作る「潤滑油(エンジンオイル)のコントロール機能」、ピストンで受けた熱をシリンダーに逃がす「熱伝達機能」、そして、ピストンがシリンダー壁に強く接するのを防ぐ「ピストン姿勢の制御機能」だ。
近年は地球環境の面から、さらなる燃費向上や排ガスのクリーン化が課題となっている。
エンジンと二人三脚で歩むピストンリングにも、さまざまな課題が課せられている。エンジン全体の摩擦損失の約20%程度がピストン周りと言われる中、課題の筆頭もまた、低フリクション化と耐摩耗性向上である。高速運動部分に使われるため、高精度で高い耐久性も求められる。さらに世界に目を向ければ、使用される燃料はさまざまで、それらへの対応も必要だ。
TPRはそれらの課題を解決すべく、さらなる高性能・高品質なピストンリング材と表面改質技術の適用により、低張力リング、薄幅リングなどの開発に取り組んでいる。
DLCと偏心バレルがトレンド
近年、同社が力を入れているのが、DLC(Diamond-like Carbon)皮膜を使ったピストンリングである。組成としては水素フリーのta-Cで、密着性向上を重視した硬さ、耐久性を考慮した膜厚、完成表面の微細な粗さを実現する表面改質技術を確立した。「弊社のDLCを採用することで、従来のPVDにくらべ、耐摩耗性の向上とフリクション低減効果が図れ、低燃費化へ大きな貢献になった。」と伊藤は明かす。2014年に実用化し、世界に先駆けて量産を手がけている。
もう一つの自慢が、「サイドレールの偏心バレル形状」。よく見ると、ボアと摺動するサイドレールの外周バレルの頂点位置が下側に偏心させてある。この形状にすることで、オイル掻き機能が向上し、オイル消費量は大幅に低減した。「誇るべきは、オイルコントロール機能の向上だけではありません。サイドレールの幅寸法は0.4mm前後という世界。この形状を安定生産できることこそが、我が社の自慢なのです。でもパッと見ではすごさがわからないのが残念でもあります。」、そう言って同社技術企画室主幹・藤森馨は笑った。
サイドレールの偏心バレル形状
DLCピストンリングの断面拡大写真
シリンダライナに使われる特殊鋳鉄
一方、シリンダライナは、シリンダを構成するためにエンジンブロックにはめ込まれる円筒であり、エンジン内部を構成する最重要部品の一つ。自動車内部の他の部品同様、最大の機能は「摺動面の形成」であり、耐焼付性の高さや自身の摩耗が少ないこと、相手ピストンリングの摩耗が少ないこと、潤滑油消費量が少ないことが強く求められる部品だ。さらには、燃焼熱を冷却水に伝える伝熱機能や圧縮気体や燃焼ガス圧の外部漏れをふせぐ機密保持なども重要な機能である。
自動車の軽量化のニーズが高い今、アルミのエンジンブロックが主流になっている。
しかし、アルミは本来摺動に対して弱く、焼き付き易く、変形もし易い。その対応策として同社は、特殊鋳鉄製のアルミブロック用シリンダライナを展開している。要は自己摺動性の高い鉄をかませることで、高熱伝導性と高剛性を実現した製品。ダイカスト時のブロックアルミとの強い密着性が特徴で、そこには同社の独自技術である金型遠心鋳造法が活きているという。特に外周の鋳肌をよく見ると、一つ一つがキノコ状の突起となっているのがわかる。「単一面積に安定してどれだけの針数を作るか、どれだけの高さを作るか。それが実現できるのが、我々のノウハウなんです」(藤森)。現在、この技術を応用した新たな部品の開発を進め、アルミ等の異種材料との複合化製品を開発中だという。
シリンダライナ
シリンダライナの外周鋳肌部(左写真)を拡大するとキノコ状の突起(右写真)が見られる
取材にご協力いただいた伊藤さん(左)と藤森さん(右)
御柱祭で培われたTPRの団結力
パワートレイン製品で順調に業績を伸ばしているTPRだが、来たる自動車のEV化を見据えた、新事業も積極展開している。樹脂成型技術と加飾技術による外装部品、射出成型+樹脂塗装による内外装部品、エンプラ系樹脂や合成ゴムの各種シール機能部品、遠赤外線やアルミ箔のヒーターや乾燥用機器、蓄電デバイスの電気二重層キャパシタ、オープンセル型ポーラス炭素やカーボンナノチューブの炭素材料開発など、その領域は実に幅広いのだ。なぜ、これほど事業領域を広げられるのかと言えば、グループ会社とのシナジー強化や他社とのコラボレーションに積極的に取り組んでいる同社の社風が挙げられるだろう。
このオープンな社風は藤森と伊藤の2人からも感じられた。そう告げると、藤森は「一つのプロジェクトが立ち上がると、世代や部署の垣根を越えて全員が一丸となって一気に物事を進めていく。そのパワーが我が社の強みです。諏訪の地域性なのかもしれませんね」と答えた。
今回訪れた長野工場の一角には小さな社が築かれ、その敷地の四隅にはそれぞれに柱が建てられていた。かの有名な諏訪大社の御柱の小型版のような様式だ。諏訪地域には大小100カ所以上、同様の神社があるという。TPRでも御柱祭の年になると、社員が山から木を運び、新たな柱を建てるのだ。
御柱祭の諏訪パワーで、TPRはこれからも伝統をベースに、新たな未来を切り開いていくだろう。
(取材・文 横田 直子)
TPR株式会社
本社所在地 東京都千代田区
http://tpr.co.jp/
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よごれ0(ゼロ)ロボッ子
村越 心 さん(当時9 歳)
この‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’は、体が掃除機のようになっています。手は掃除のアイテムが出てくるようになっています。口はゴミを吸い込めるようになっています。そして、吸い込まれたゴミは大きなおなかに入り、それが‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’のごはんとなります。目はセンサーが付いていて部屋のよごれがあるとすぐに気づけるようになっています。足はモップで水などをふけます。モップは自由に動きます。頭にはアンテナが付いていて、電気に近づくと体全体が気づき、動くようになっています。これが‘よごれ0(ゼロ)ロボッ子’の仕組みです。