小特集 ブレーキの摩擦振動研究
交通・物流部門: 「ブレーキの摩擦振動研究会(A-TS18-06)」の紹介
複合専門領域の研究会設立の背景と目的
自動車の安全性能向上のため、ブレーキの効きは最も重要である。ディスクロータの大型化および摩擦係数の高い材料採用などによって効き改良を進めると、ブレーキ鳴きなどの振動騒音が増加することが多く、それらの低減が重要な技術課題となる。摩擦係数が高いと航空機主翼の曲げと捩じりの振動連成で発生するフラッタと同じ原理でブレーキ鳴きが発生するということが明らかにされ、幾何学的要因と固有振動数の適正化によって設計改良する方法が開発されてきた(1)。また、自動車の安全性能向上に加えて軽量化の要求も高くなり、ディスクロータの大型化を避けることが望まれる。このような状況下で、今後も引き続きブレーキの振動騒音低減技術の開発は必要である。
ブレーキ鳴きなどの発生が原理的には示されたが、実際のブレーキ設計においては十分な改善技術が開発されたとは言えない。簡単な例を挙げれば、摩擦係数の安定化ですらも実際には簡単ではない。ブレーキ設計において、振動解析的な観点に加えてトライボロジー的観点が必要となる。著者は振動解析が専門分野であるが、実際のものづくりにおいては摩擦現象に関する技術を学ぶ必要性を感じていた。また、これまでに開発したブレーキの振動騒音設計改良技術を実務者に定着させることが必要である。
これらの背景のもと、とちぎ自動車産業振興協議会(栃木県産業振興課)の協力要請を受けて当時帝京大学に在籍していた著者は、産業振興を目的とした研修会「摩擦振動を中心とした談話会」を2010年にスタートさせた。その後、全国規模に拡大して2015年からは機械学会交通・物流部門の研究会に移行し、談話会の開催を継続している。
海外ではSAE Brake ColloquiumとFISITA主催EuroBrakeの二つのブレーキに関する研究発表会があり、研究開発と技術交流の促進がなされている。しかし、日本からは費用・日程・言語などの問題もあり参加は容易ではない。これらの学会への日本からの参加者(大分大学の中江貴志氏、Link Japanの志水英敏氏、トヨタ自動車の塩見幸広氏、元本田技研の菅沼靖氏、キリウの岡村俊和氏、アドヴィックスの西澤幸男氏、他)の協力を得て、日本でブレーキに関する技術課題の研究開発と技術交流の促進を図ることにした。ここで参考までにSAE Brake ColloquiumとEuroBrakeを紹介する。
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【表紙の絵】
何でも作るくん
田中 雄惺くん(当時8歳)
何でも作るくんが何でも人が作りたいぶひんを出しかんせいまで作ってくれる。