特集 ユーザーエクスペリエンス
心が通う身体的コミュニケーション
1.はじめに
対面コミュニケーションでは、単に言葉によるバーバル情報だけでなく、音声の韻律情報やうなずき、身振り・手振りなどの身体動作といった言葉によらないノンバーバル情報が、話し手自身はもちろん、話し手と聞き手とで身体的リズムを共有して互いに引き込むことで、円滑にコミュニケーションをしている。また情動変動と密接に関連した心拍間隔変動の引き込みや呼吸の引き込みなど生理的側面での引き込みも、インタラクションに重要な役割を果たしている。これらノンバーバル情報と生体情報をも含めた身体全体を介してのインタラクション・コミュニケーションは、身体的コミュニケーションと呼ばれ、お互いの身体を介することで関係を築くコミュニケーションである。この身体性の共有が一体感を生み、人とのかかわりを実感させている。乳児期から母親(育児者)の語りかけに対して身体動作との引き込みにより言葉という文化を獲得してきた以上、この身体的リズムの引き込みによる一体感・身体性の共有なくしては、心の基底の部分で情報を送受信することは極めて難しいのではないかと考えられる(1)。したがって、この身体的コミュニケーションのメカニズムがヒューマンインタフェースに導入されるならば、真に人間に立脚した身体的コミュニケーションシステムが実現できるものと大いに期待される(図1)。そのシステム開発の一つの大きな目標は、相手との一体感があり、共感し、お互いの思いが通い合える身体的コミュニケーションインタフェースを構築することにある。
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【表紙の絵】
「くもをすいこんでたべものにかえるきかい」
井岡 武志 くん(当時6歳)
うえのえんとつからくもをすいこんで、きかいのなかでたべものや、おさら、スプーンにかえるきかいです。
できたたべものはベルトコンベアーではこばれて、おきゃくさんのどうぶつたちが、たのしみにならんでまってます。