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2018/4 Vol.121

【表紙の絵】
「あいするこころロボット!!」
齋藤 佑陽 くん(当時5 歳)
人間ができないことが何でもできる
ロボットがあったらいいな。

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特集 オリンピック・パラリンピックに貢献するスポーツ工学

スポーツに学びスポーツを支える

桐山 善守(工学院大学)

パラサイクリング

サイクリング競技は、日本のみならず海外においても大変人気のあるスポーツである。その人気の高さは、国際的に有名な大会が独自に開催されるだけでなく、オリンピックなどでの主要種目であることからも理解できる。

サイクリング動作では、ペダルを踏み込みクランクを回転させる。これにより、チェーンを介して車輪を回転させ、推進力を得る。コースへの対応や駆け引きなどの戦略はあるが、基本的には一定の周期でクランクを回転させる必要がある。この際、図1に示すように、下肢による踏み込む力(踏力)を無駄なくペダルに伝達することで、効率的なクランクの回転を実現できる。下肢とクランクとの幾何学的制約や下肢の解剖学的構造のため、全ての踏力をクランクの接線方向の力とすることはできないが、理想的な状況に近づけるように、自転車の設定を調整し、漕ぎ方を工夫する。

障がい者の行うパラサイクリングも同様であり、トップサイクリストともなれば一般の健常者よりも圧倒的な速さで走ることができる。

パラサイクリングとは、「国際自転車連盟の規定する競技規則のもと行われる障がい者の自転車競技」とされている(1)。障害やその程度により四つの競技クラスが設定されている。身体に障害を持つパラサイクリング選手の中には、義足の選手もおり、障害という制約の中で健常者とは異なるテクニックや独自の自転車の設定などを用いて高いパフォーマンスを実現する。こうした工夫は、我々が当たり前だと思っている身体の動かし方に目を向けさせ、そもそもの解剖学的構造の持つ動きやすさについて改めて考えるきっかけともなる。

筆者は、2016年に開催されたリオデジャネイロ・パラリンピックにおいて、ハイパフォーマンスサポート事業(スポーツ庁)を通じてパラサイクリング選手に対する支援の機会を得た。実際には、エンジニアが工学とスポーツのあり方を学ぶ貴重な経験であった。本稿では、支援の一環として開発したセンサやコンピュータシミュレーションの例を紹介することで、スポーツ工学がオリンピックやパラリンピックに対してできる貢献や可能性について示す。

図1 ペダルと踏力の関係

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