特集 実用化迫る自動運転 産官学の視点から
自動運転をめぐる技術知識とエコシステムの拡大
表1 自動運転領域の中核的技術知識と主要企業の関連特許保有動向
出所:USPTOの特許情報をもとに著者作成
注1)特許保有者の9社は次のように定義した。TOYOTAは、トヨタ自動車株式会社およびToyota Motor Engineering & Manufacturing North America, Inc.の合算。DENSOは、株式会社デンソーおよびDENSO INTERNATIONAL AMERICA, INC.の合算。DAIMLERは、2007年以前はDaimler Chrysler AG、それ以降はDaimler AG。BOSCHは、Robert Bocsh GmbH。GMは、GM GLOBAL TECHNOLOGY OPERATIONS LLC。DELPHIは、Delphi Technologies,Inc.。GOOGLE/WAYMOは、Google Inc.とWaymo LLCを合算。INTEL/MOBILEYEは、Intel CorporationとMobileye Vision Technologies Ltd.を合算。UBERは、Uber Technologies, Inc.。
はじめに
完全自動運転に向けた開発競争が本格化
2016年9月に米国NHTSAが発表した新政策を受けて、Lv4/5の完全自動運転の開発競争が本格化している。GMは2016年はじめに配車サービスのリフトに約5億ドルを出資すると同時に、自動運転技術を開発するクルーズオートメーションを約10億ドルで買収し、統合的な自動運転ネットワークの構築を目指している。こうした自動運転のエコシステムに参入するのは自動車メーカーだけではない。半導体大手のインテルは自動運転を社会基盤としたMaaS(Mobility-as-a-Service)市場の合計を7兆ドル(2050年)と推計したレポートを発表し、新たな環境変化に対応すべく、2017年8月にはイスラエルの自動運転スタートアップのモービルアイを約150億ドルで買収した。
こうした中、完全自動運転の実証実験もスタートしている。Google/Waymoは、人工知能(ディープラーニング)を活用し、バーチャル環境でのシミュレーションも繰り返すことで、カリフォルニア州DMVが管轄する一般道での実証実験(2016年)では、すでに63万5868マイルを走破し、自動運転解除回数は124回だけであった(1)。これは1,000マイルに平均0.2回のレベルでしか人間が介在する事象は発生しないことを意味し、他メーカーの自動運転解除率を大きく引き離している。
完全自動運転の実現に向けた開発競争が激化する中、 どのような企業が競争優位を獲得するのだろうか。本稿では、完全自動運転に求められる技術知識を分析した上で、エコシステムの拡大とイノベーション戦略の課題を示唆する。
キーワード:特集
【表紙の絵】
「エコな飛行機」
佐藤 想士 くん(当時10 歳)
地球から出たよごれた空気を吸う事で空を飛び、きれいな空気に変換して排出します。緑の少ない土地には種をまきます。
皆、この飛行機が大好きです!!