特集 新たな価値創造のために ~女性活躍と多様性の推進~
LAJ 活動紹介
日本機械学会には、LAJ 委員会という女性エンジニアの
委員会があるのをご存知だろうか?
LAJ 委員会とは?
LAJ 委員会(Ladies’ Association of JSME)は、機械工学分野における、女性研究者・技術者の活動を支援し、女性会員の増強を図ることを目的に、日本機械学会会員部会の下部組織として2004 年10 月に発足し、2017 年で14年目を迎えた委員会である。LAJ 委員会では次の3 点を主な目標として活動を行っている。
①機械工学分野で活躍している女性の積極的な情報発信
②機械工学に携わっている女性のネットワークの充実化と拡大
③性別をこえた研究・職場の環境つくり
近年、働く女性に注目が集まり、管理職への女性の登用、各種講演会などでの女性講師の増加、リケジョを対象としたイベント企画など、社会的に女性の活躍が期待されている。このような社会の動きに合わせて、育休制度の充実など、子育てや介護などのライフイベントと仕事とを両立してこなせるように、いろいろな制度やシステムが変化しつつある。働く女性が徐々に多くなり、職場での女性比率が増加しつつあるが、それでもなお十分な理解が得られないことや、辛い場面に遭遇することもある。
LAJ では、そんな時に気軽におしゃべりしてストレス発散したり、気分転換したり、時には解決策も見つけられる場を提供し、メカジョネットワークを広めることを目的に活動している。
日本機械学会の女性会員数について見ると2017 年8 月末で、総会員数約35,670 名の内1,046 名であり、2004年にLAJ が発足して女性会員数が1.8 倍となったものの、個人会員に占める女性会員の割合は2.9% である。このように女性会員数が少ない理由の一つとして、理系を志望する女子学生の中で、機械工学分野への進学率が低いことが挙げられる。大学の機械工学分野で何を学び、まどのようなキャリアパスが選択できるのかあまり知られていないのが現状である。LAJ ではそのような状況を好転させるためのきっかけづくりとして、中学・高校へ出前授業を行う活動をしている。また、女性技術者・研究者間のネットワークを広めることを目的に、北海道から九州まで6 都市で女性エンジニア交流会を開催し、さらに学会の地域ブロックとの合同企画も行っている。
毎年開催される日本機械学会年次大会にて、ランチミーティングも開催している。開催期間中のいずれか一日のお昼休みに、会場内の教室を使って参加者同士の交流を図っている。会場ではお菓子と飲み物のみ用意し、ランチは各自の持ち寄りで開催しているが、毎年約20 名前後の参加者があり、大変盛況である。年次大会は全国の大学、さまざまな地域から参加者が集まるため、ネットワークを充実させるうえで、大変貴重な機会となっている。
その他、工場見学を含めた交流会(地域ブロックとの合同企画)も開催し、数多くある理系科目の中から機械工学科を選択する機会を生み出す努力を行っている。進路選択は両親からの影響が大きいため、保護者も同席の出前授業を行うのは大変貴重な機会である。例えば週末などに、父親のものづくりの趣味を手伝ったなどの経験が女子学生の機械工学選択に繋がるケースも多いと聞いている。
機械系女性エンジニアを取り巻く環境の変化
内閣府が出している年齢階級別就業率の変化および推移のデータでは、「子供ができても、ずっと職業を続ける方が良い」の回答が、平成4 年と平成28 年で比較すると、女性で26%→ 55%、男性で20%→ 53%へと倍以上の伸びを見せている(1)。一方、製造業における女性管理的職業従事者は約7%に過ぎず、全産業においても13%程度にしか達していない(2)(3)。2020 年に指導的地位に占める女性の割合30% の達成は到底不可能な数値である。しかし、女性活躍推進の動きは緩やかではあるが、確実に社会へ浸透し始め、女性をとりまく社会の環境は変化している。
日本機械学会は2017 年で創立120 周年を迎え、初の女性会長として大島まり氏が就任し、2017 年3 月14 日に第1 回メカジョ未来フォーラムを開催した。機械系女子学生の就職・キャリア形成支援を目的として、女子大学生・大学院生・高専生に向けて、企業説明・交流会ならびに企業で実際に活躍されている女性技術者の体験談などを聴くことができる機会を特別に設けた。参加者は会員学生に限らず、産業界への就職を考えている女子学生であれば、無料で参加可能とし、最初の講演会については機械系への進学を考えている女子中高生とその保護者も対象とした。初めての機械系女子学生のみを対象としたイベントとあって、企画当初はどれくらいの企業と学生が集まるのか予想できない部分が多かったが、展示出展を希望した企業数は予想をはるかに越え、申込開始からすぐに定数枠50 社に達する事態となった。一方で女子学生の参加者についても機械系(理系含む)の大学生、大学院生、高専生(一部中学生、高校生含む)合計約120 名を集めるに至り、大変盛況なフォーラム開催となった(図1)。
図1 2017 年3 月14 日に開催された日本機械学会メカジョ未来フォーラムの様子
(明治記念会館内の企業展示会場)
LAJ の活動を通して見えるもの
日本機械学会LAJで行っている女性エンジニア交流会は、大学生、大学院生をはじめ企業の女性技術者、研究者が集まり、食事をしながら気楽に歓談しネットワークを構築する会である(図2)。自分が困っている問題について、ぴったりの解決策が見つかれば言うことはないが、解決策がなくても喋ることでストレスを発散し、またいろいろな情報を得ることで、気分新たに仕事に向かえるような場を提供することを目的としている。
交流会は2011 年から毎年行っており、現在ではLAJ 委員会の中心的な活動の一つとなっている。最近では、北陸地区も加わり、九州から北海道にわたる全国7 都市での開催が可能となった。これに合わせて各地域の委員も充実させ、現在各地域に1 ~ 2 名の大学職員や企業委員が常駐し、全体で約25 名の委員が全国各地でLAJ の活動を支えている。多くの交流会の中で挙げられる質問の中には、四角四面には答えられないものもあり、これらに対するリアルな現場の声を聞けることが交流会への参加動機として大きい(4)。
女性は結婚・出産などのライフイベントが多く、女性の数だけさまざまなキャリアパスが存在する。それと同時に、その選択肢の多さに戸惑う女子学生も少なくない。一方で企業による女性エンジニア獲得への活発な状況もあり、メカジョを取り巻く環境は目まぐるしく変化し続けている。それでもまだ、女子学生から「将来が不安である」といった声が数多く上がるのは女性エンジニアの数が少ないことからも仕方のないことである。よって、困った時に相談できる女性エンジニアネットワークは今後大変重要なものになっていくと考える。学会の中だけでなく、企業、大学の中で部局を越えたネットワーク作りから始まり、それらが社会全体へのネットワークへつながる時こそ、真に女性エンジニアが活躍できる社会へ近づくものと考える。男女ともに働きやすい社会になるように少しずつ周りの環境から変えていく活動を今後も行っていきたいと考えている。
LAJ 委員会活動はホームページ
https://www.jsme.or.jp/laj/info.html のほか、Facebookやメルマガを通して情報発信しているので、ご興味のある方はアクセスしていただきたい。
図2 日本機械学会女性エンジニア交流会の様子
参考文献
(1) 内閣府男女共同参画局ホームページhttp://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-02.html
(参照日2017 年11 月1 日)
(2) 内閣府男女共同参画局ホームページhttp://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-06.html
(参照日2017 年11 月1 日)
(3) 内閣府男女共同参画局ホームページhttp://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-07.html
(参照日2017 年11 月1 日)
(4) 武仲能子・山西陽子・塚田竹美, 日本機械学会LAJ 委員会の活動紹介, ボイラ研究, No.402(2017) , pp.4-8.
<正員>
山西 陽子
◎九州大学 大学院工学研究院 機械工学部門 教授/ LAJ 委員長
◎専門:マイクロ・ナノ工学、μ-TAS
キーワード:特集
【表紙の絵】
「心ウキウキゆかいな
メロディーメーカー」
吉川 知里 さん(当時9 歳)
前にテレビで見た“日本の町工場で作られたネジや部品が世界で使われている”という話をきっかけに考えていた機械です。
ドアの開閉の力で歯車が動き、その時その気分にあった音楽が流れてきます。
朝は1 日を元気に過ごせるようなやる気の出る音楽、夜は1 日の疲れをとってくれる優しい音楽、
悲しいことがあった時は、なぐさめてくれます。
荷物やお手紙が届くとお知らせチャイムが流れます。