特集 新たな価値創造のために ~女性活躍と多様性の推進~
ロールモデルからのメッセージ
女性技術者の声
私のまわりの女性技術者
三菱電機(株)にはさまざまな分野で活躍している女性技術者がいる。その中で、筆者が一緒に仕事をしている女性技術者の2人に、「家庭と両立して業務を進める中で感じることや、男性が多い職場で働くことについての生の声」を聞いた。ほんの一例ではあるが、ロールモデルとして紹介することで、これから社会人になる女子学生や読者の皆様の参考になれば幸いである。1人目は入社4年目で、日々仕事を自分の糧として吸収している研究職の池田さん。2人目はエンジニアとして13年目、バリバリ仕事をこなす津村さん。2人とも傍から見て楽しそうに仕事をしている。
ロールモデル:池田さんの場合
育児休暇からの復職
池田さんは、工業高校から大学院まで機械工学を学び、2014年の入社後、空調機に関連したトライボロジー分野の研究開発に従事している。複数の課題に並行して取り組みつつ、解析技術や実験技術など覚えるべきことも多く、スピード感が学生時代とは比べ物にならないことに驚いたが、自分が関わった研究内容が身を結び、製品に適用されたときはとてもうれしかったことが忘れられないとのこと。
そんな中、私生活では妊娠・出産を経験し、1年半の育児休暇を経て3 ヶ月前に職場へ復帰した。現在は育児と仕事の両立をめざし、育時短時間勤務で働きながら1歳の娘を子育て中である。夫は同じ事業所の他部署で働いており、朝は家族で出社し、社内の託児所に娘を預けたあとに2人で出勤している。復職後は産休前に取り組んでいた仕事の延長にある課題の解決を任されたため、大きな混乱はなかったようだ(産休前のことを思い出すのは大変だが……)。復職前に上長との面談を複数回実施したこともスムーズな復帰のために助かった。これからの生活と仕事をより充実したものにするために、家族への負担が増えない仕事量で、かつ研究に対するモチベーションを保つためのペース配分を模索しながら日々を過ごしている。そして将来どのようにキャリアを重ねていくか考えているところである。
女性はライフイベントによりキャリアプランの変更を強いられることがある。自ずと悩みや不安は増え、そのたびに選択することも要求される。しかし、1人で抱え込まず周囲の協力や支えを全力で受け取り、会社制度の活用により、女性であることをむしろメリットであると捉えられることも多いと、池田さんは感じている。技術者・研究者という職業は依然として男性が多いが、女性技術者数は年々増えており、ベテランの女性技術者に聞いても一昔前とは会社制度の充実度が全然異なるという。「これから機械工学を学ぶ方には、周囲と性別を飛び越えてコミュニケーションをとることを重視していただき、理系女子学生の社会に対する不安は杞憂に終わることを期待している」というメッセージであった。
社内の託児所にて
ロールモデル:津村さんの場合
部署初の女性エンジニア
津村さんは、エンジニアとして働いて13年目になる。前職では設備設計を3年ほど経験し、三菱電機入社後はエコキュート用圧縮機の設計を経て、現在は品質保証として静岡製作所で開発する製品(エアコン・冷蔵庫・圧縮機)の強度信頼性検証や、大学との共同研究などを担当している。
設計開発の現場では、社内外問わずさまざまな人と関わる機会が多く、その相手のほとんどが男性である。女性だから困ったということはあまりないものの、入社当時は部署初の女性エンジニアだったそうで、どちらかと言えば周りの男性の方がどう扱っていいのか困惑していたようで申し訳ない気持ちだったと語った。そんな中でも、分け隔てなく仕事を任せてもらったり、時には叱ってもらったりすることで、やりがいや責任を実感することができた。周囲の気遣いが、溶け込みやすく前向きに働ける職場を作ってくれたと本当に感謝しているとのこと。
感謝といえば、夫の転勤が決まったとき、ついて行くかの判断は任せてもらい、現在は離れて生活している。一緒に住んでいた時も、仕事がある日は家事をしなくていいと言ってもらっていたので、気兼ねなく働ける家庭環境は何よりの応援になっているという。
仕事をしていれば、どうしても男性と同じようにはいかないと感じることもあるし、今後さまざまなライフイベントを経験すれば、そう感じる機会も増えるかもしれない。一方で、社会的にも企業個々の取り組みとしても働き続けたいと考える女性を支援する動きは高まっており、政府の施策も後押しして、女性活躍のチャンスは増えている。そんな時だかからこそ、性別に関わらず、個人としての価値・魅力を自分自身高めていきたいし、これから社会に出る女子学生の皆さんにもぜひ意識していただきたいという津村さんからのメッセージであった。
津村さんの打合せ風景
<正員>
佐々木 辰也
◎三菱電機(株) 先端技術総合研究所機械システム
技術部フリクション・機構グループ 主席研究員
◎専門:トライボロジー
キーワード:特集
【表紙の絵】
「心ウキウキゆかいな
メロディーメーカー」
吉川 知里 さん(当時9 歳)
前にテレビで見た“日本の町工場で作られたネジや部品が世界で使われている”という話をきっかけに考えていた機械です。
ドアの開閉の力で歯車が動き、その時その気分にあった音楽が流れてきます。
朝は1 日を元気に過ごせるようなやる気の出る音楽、夜は1 日の疲れをとってくれる優しい音楽、
悲しいことがあった時は、なぐさめてくれます。
荷物やお手紙が届くとお知らせチャイムが流れます。