エンジニアリング教育の達成度評価 ~テスト問題バンクの取り組み~
第11回(最終回) 今後に向けて
1. エンジニアリング教育を取り巻く状況
我が国にとって、第4次産業革命や「超スマート社会」(Society5.0)といった産業創造や社会変革を担う人材の確保や育成が喫緊の課題であり、工学系教育への期待が高まっている。このような背景のなか、工学系教育の在り方(1)、技術者教育認定の在り方(2)、技術士制度の在り方(3)等について活発に検討がなされている。一方で、高等教育の修了生にどのような知識・能力(学修成果)を身につけさせたいのか、また、プロフェッショナルエンジニア(技術士)になるにはどのような資質能力(コンピテンシー)を身につければよいのか、そして、その効果的な育成方法はどのようなものか、その達成度はどのように評価するのか等々についてもさまざまな議論がなされている。
工学分野では、エンジニアリング教育の質的同等性を保証する国際的枠組み(例えば、ワシントン協定やEUR-ACE(2))が存在し、他の多くの専門分野と比べて、学修成果への標準化が進んでいるといえる。また、プロフェッショナルエンジニアのコンピテンシーについては、国際エンジニアリング連合(IEA: International Engineering Alliance)において、技術者資格の相互認証の観点から「専門職として身に付けるべき知識・能力」(PC: Professional Competencies)の枠組みが形成されている(4)。我が国においても、技術士に求められる資質能力として「専門的学識」「問題解決」「マネジメント」「評価」「コミュニケーション」「リーダーシップ」「技術者倫理」の7 項目を挙げて、各々の項目において、技術士であれば最低限備えるべき事項を定めている(3)。
しかしながら、実際には、学修成果は「何々を理解し応用できること」などのように抽象的に記述されているため、具体的にどのような範囲と水準の知識・能力の修得を期待しているのかについては、大学教員や技術者のコミュニティにおける暗黙的な理解の範囲に留まっているといえる。
キーワード:エンジニアリング教育の達成度評価
【表紙の絵】
「オゾンホール修復飛行船O3-ZES21」
久保 竜希 くん(当時10 歳)
O3-ZES21( オーゼス21:O Zone Eco Ship 21 century)この機械は飛行船にオゾン発生装置を取り付けて、上空で飛行しながらオゾンを製造し、オゾンホールをふさぎます。燃料はいりません。晴れの日は屋根のソーラーパネルで、曇りや雨の日はプロペラと、オゾン発生装置のファンが回ることで電気を作れます。出発前に地上でCO2 を取り込んで、上空でO3 に変えて、放出します。O3-ZES21 の作ったオゾンのおかげでオゾンホールがなくなり、紫外線がさえぎられて、南極の生き物が大喜びしています。