特集 日本機械学会のグローバル化~アジア諸国との連携のあり方~
日本企業のグローバル化
グローバル化の流れ
近年、労働力不足の解消とグローバル競争に打ち勝つため、多くの日本企業は国外人材を積極的に採用している(1)(2)。しかし日本企業は、採用する外国人従業員の強みである多様的価値観や能力を活かせているのか、また外国人が日本語を習得しなければコミュニケーションが成立しない日本企業が本当にグローバル化できるのか、伝統的な日本企業に10年以上勤めてきた筆者は疑問に感じている。ここで、筆者が留学および日本企業で働くことを通して実際に実感したことを皆さんと共有したいと思い、執筆した。
日本への留学
筆者は、大学三年生の時に在籍していた吉林大学と東北大学の交換留学コースで初めて来日した。東北大学ではさまざまな国や地域からの留学生に出会い、大変良い刺激を受けた。それもあり、大学を卒業した後、再度東北大学に留学することにした。修士ではMEMS分野で著名な江刺教授の研究室に在籍し、研究室の設備の充実さと半分以上が留学生であるといった点に大変驚いた。多種多様な文化を持つ留学生と日々接することで、異なる分野、観点や考え方などが理解でき、さまざまな経験ができた。また、国際的かつオープンな環境で、フランクでインテンシブな議論ができ、個人の価値観が変わるほど大変貴重な経験となった。
日本企業への就職
修士を卒業した後、高い技術力を誇る日本企業で勉強してきたことを活かしてみたいと思い、現在の会社に入社した。当初思っていた日本企業のイメージ通り、明確な組織構造および充実した制度で、とても働きやすい職場であると感じた。また、周りには優秀な社員が多く、筆者も頑張らないといけないと緊張感を持ち、業務に従事した。さらに、周りの社員の仕事に対する誠実さ、まじめさ、強い責任感に大変感心し、日本技術の強みの原点はここにあるではないかと感じた。
一方、グローバル企業というイメージがあったものの、ふたを開けてみると実際は伝統的な日本企業だった(笑)。年功序列に見られる長期的に人材を自社に留めておきたいという日本的な発想に対して、外国人は短期間でスキルアップにつながる変化を好む傾向があり、思考にはギャップがある。入社3年目まではメンターと呼ばれる先輩が付き、仕事の指導を受けるのは日本企業の一般的なやり方である。安心して働けるありがたさがある一方、チャレンジできることも限られていた。また、筆者のように日本語特有の言葉使いとビジネス用語の壁に悩まされた経験を持つ外国人は多くいるだろう。例えば、入社当初、上司に“リスケ”と言わて戸惑い、一生懸命Googleで調べたことは昨日のことのように覚えている。また、日本語の能力が不十分であるため、敬語や適切な日本語でうまく表現できず、先輩に注意されたこともあった。当時、心が折れそうな時もあったが、今思えば大変ありがたいと感じている。もうひとつ壁に感じたのは、先輩と後輩の上下関係だった。入社間もない頃、先輩と相いれない認識があり、頑張って自分の意見を主張しようとしたが、最終的に言葉の壁を乗り越えられず、先輩のパワーにのまれることが多々あった。こういう時、会社は何のために外国人を採用しているのか、外国人に何を期待しているのか、疑問を感じる時がある。
今となれば、仕事をだいぶ任され、自分の裁量で進めることができるようになり、非常に働きやすく感じている。筆者は仕事と育児が両立できる職場環境をありがたく感じる一方、徐々に見えてきた自分のキャリアパスに対し、寂しさも感じはじめている。母国ではすでに管理職になっている同級生が多くいる一方、筆者は現状のキャリアパスのままでいいのかと心の中で葛藤することもよくあった(苦笑)。
日本企業への提言
本来、日本企業は異なる文化から生まれる異なる考え方を活かし、お互いに刺激し合い、そして相乗効果を期待しているはずである。しかし現状は、外国人は郷に入っては郷に従い、最終的に外国人が日本化する形になっていることが多いだろう。少数の外国人が日本企業に変化をもたらすことができているか、極めて疑問に感じている。日本企業はグローバル化を促進するため、書類や公用語を英語にするなどの取り組みも行っているが、これは本質的ではないだろう。本当の意味のグローバル化を実現するため、業務プロセス、評価制度、社員意識を少しずつ変えていくしかないと考えている。これらの考え方が変わらない限り、日本企業のグローバル化の努力は表面的なものに終わるだろう。
参考文献:
(1)石原直子,「人材のグローバル化」は進むのか―本社における高度外国人材活用の実態から―,WorksReviewVol.7(2012),pp.8-21.
(2)狩野史子,グローバル化の中で期待される高度外国人材の活用,FRIコンサルティング最前線,Vol.6(2014),pp.68-73.
<正員>
李 永芳
◎(株)東芝 研究開発センター機械・システムラボラトリー 研究主務
◎専門:MEMS、ナノリソグラフィ
キーワード:特集
「ゴミをでんきにリサイクル」
鈴木 偲温 さん(当時8 歳)
このきかいは、どこのくにでもでるゴミを、わたしたちにとってとてもひつよう、でんきにかえるきかいです。せかいの大人たち子どもたちにゆたかな生かつを送ってほしいです。