特集 日本機械学会のグローバル化~アジア諸国との連携のあり方~
グローバル化とダイバーシティについて
グローバル化の正念場に向かって
筆者が入社した2006年当時、外国人社員の割合が1%未満であった。これに対し、欧米の先進企業では、通常3割程度が外国人社員となっており、日本企業の人材グローバル化は立ち遅れているといえる(1)。
2010年頃に、ユニクロや楽天が英語公用語化を発表した。これに象徴されるように、日本中にグローバル化の「ブーム」が起こった。(株)日立製作所も、毎年、外国人向けの就職セミナーを開催し、外国人採用に力を入れるようになった。この甲斐あって、ここ数年では、毎年10%前後の外国人が入社している。
現在、「ブーム」から5年以上が経過し、当時採用した外国人が続々と中堅社員になり、人材グローバル化の効果が期待される時期に差しかかっている。しかし、筆者が見ている限り、順調に人材が育っているケースもあれば、入社後、モチベーションが低下したり、離職したりするケースも少なくない。期待される効果がでないと、せっかく盛り上がった人材グローバル化の機運が萎んでしまう恐れがある。そういった意味で、グローバル化の正念場に来ていると考える。
この正念場を乗り越え、効果を出していくためには、文献(1)でも指摘されているように、日本型人事の見直しや入社後のサポートの充実、日本人を含めた全社員のグローバル化教育などが必要であり、日本人と外国人が一体となって、より一層の努力が求められると考える。
“女性の活躍”から“真のダイバーシティ”へ
ダイバーシティについて話す時に、女性と外国人が一緒にされることが多い。私が所属する研究所でも、Female&Foreignerの活躍をサポートする“Fプラン”を推進したことがある。
しかし、良く考えると、(外国人女性は別として)女性は日本語の不自由が無いし母数も多いので、外国人とは事情はかなり違う。昨今、政府の援助もあって、女性の社会進出が着実に進んでいるように見える。例えば、現在、東京都知事も機械学会の会長も女性である。
一方、外国人に目を向けると、前述のように、人数は少しずつ増えているものの、全体的には、まだ活躍の場が広がっているとは言い難い。外国人の活躍には言語や文化の壁もあって、女性の社会進出よりずっと難しいのが実情であろう。しかし、外国人を含めた真のダイバーシティは組織の活性化につながり、イノベーションの創出に大きく貢献すると言われている。アメリカでは、ここ十数年、GoogleやFacebook、Airbnbといった革新的な企業が続出するのも、多様な人材を抱えていることとは無関係ではないだろう。
このように真のダイバーシティに至るまでには、いろいろな課題を抱えているが、筆者は日本がダイバーシティの先進国になれると確信している。日本は、聖徳太子の時代から「ええとこどり」の文化を持っている(2)。
例えば、日本語は、平仮名、片仮名、漢字、英文字等が混在しており、日本では、昔から海外の様々な言語を取り込み、自分たちの言語として使っている。また、海外の食文化についても取り込んでいる。日常的に和食、洋食、中華を食べている国は、恐らく日本だけであろう。このように、多様なものを上手く融和させる能力において、日本はどの国よりも得意なはずである。
2020年に開催される東京オリンピックでは、日本が世界中の注目を浴びることが予想される。これによって、日本の良さを認識し、日本に魅了される人が増えるに違いないと考える。これは、日本人と外国人がお互いを理解する上で、千載一遇の機会であると考える。日本はこの機会を見逃すことなく、グローバル化とダイバーシティの飛躍を成し遂げることを切に願う。
参考文献:
(1)岩崎薫里,日本企業の人材グローバル化に向けた険しい道のり,環太平洋ビジネス情報,Vol.15,No.59(2015),pp.29-53.
(2)堺屋太一,日本を創った12人(2006),pp.40-44.
<正員>
馮 益祥
◎(株)日立製作所研究開発グループ主任研究員
◎専門:コンピュータシミュレーション、設計工学
キーワード:特集
「ゴミをでんきにリサイクル」
鈴木 偲温 さん(当時8 歳)
このきかいは、どこのくにでもでるゴミを、わたしたちにとってとてもひつよう、でんきにかえるきかいです。せかいの大人たち子どもたちにゆたかな生かつを送ってほしいです。