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2017/8 Vol.120

未来型かかし「Farmer」ファーマー
村越 水 さん(当時 14 歳)
本来、鳥から農作物を守るために建てられた‘かかし’ですが、もっと有効に活用しようと考えました。
笠の先端にはスプリンクラーが設置され水を自動的に放出します。笠が回り、鈴を鳴らして農作物を熊や鳥か
ら守ります。
腕から提げられた取り外し可能な籠は、収穫した野菜の重さを測ることができます。
両腕の先端は防犯カメラで 360 度監視します。カメラはもちろん‘かかし’の胴体も回ります。
異常があれば口に模したスピーカーからサイレンが鳴ります。
‘かかし’の背中にあるボックスに生ゴミや抜いた雑草を入れてセットすると堆肥になって出てきます。
これらはコンピュータ機能で管理し、笠に設置された太陽光の電気により動きます。

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特集 2017年度 年次大会

埼玉大学-All in One Campus-

写真1 埼玉大学の外観

教育・人材育成All in One Campus こその教育

埼玉大学では、人文社会科学系の教養学部と経済学部、理工学系の理学部と工学部、そして教員養成を目的とする教育学部の5学部が、一つのキャンパスにあり、多様な学問が1 箇所に集約されている(All in One Campus)(写真1)。これら個性ある5学部が、専門分野を深く学ぶための専門科目をそろえており、自分の興味・関心のある専門分野を深く学ぶことによって、専門分野の知識・技能だけではなく、長い生涯にわたって社会で生きていくための思考力・判断力・表現力も身につけることができる。

埼玉大学の基本目標

本学は、総合大学として、時代を超えた大学の機能である知を継承・発展させ、新しい価値を創造することを基本的な使命としている。

第一目標は、次代を担う人材を育成する高度な教育を実施するとともに、多様な学術研究を行って新たな知を創造し、これらの成果を積極的に社会に発信して、存在感のある教育研究拠点としてより一層輝くことである。

第二目標は、産学官の連携によって、知の具体的な活用を促進し、現代が抱える諸課題の解決を図るとともに、地域社会とのコミュニケーションを積極的に図り、そのニーズに応じた人材を育成して、広域地域の活性化中核拠点としての役割を積極的に担うことである。

第三目標は、海外諸機関との連携を推進して、多様なグローバル人材を育成するとともに、人類が抱える世界的諸課題に学術成果を還元し、国際社会に貢献することである。

本学は、多様なニーズや研究リソースを持つ首都圏にあって、時代を超えた大学の機能である「知の継承と発展」を実行し、新しい知の創造を通して社会に貢献することを基本的な使命としている。

日本の社会経済状況の変化の中、国立大学はそれぞれに、社会の変革を担う人材の育成やイノベーションの創出といった役割を果たすため、機能強化に取り組むことが求められており、埼玉大学では二つの軸を基に改革を進めている。第一の軸は、知の継承と創造をしっかりと据えた、研究と人材育成という知の府としての基盤の強化。そして第二の軸は、埼玉県を中心とする首都圏地域の活性化の中核拠点として、その役割を積極的に担うことによる個性化である。文系・理系の全学部が1キャンパスにあり、日本人学生や留学生、社会人学生が集う利点を活かし、「埼玉大学 All in One Campus at 首都圏埼玉~多様性と融合の具現化」のビジョンの下、その多様性を柔軟に受容しつつ、文と理、ローカルとグローバルを調和させてシナジーをもたらす。

戦略的研究領域で強み・特色ある研究を推進

2014 年4 月に大学の研究力を強化するために、学内各研究センターを再編統合して理工学研究科に教員を集約するとともに、理工学研究科に戦略的研究部門(3 領域)が設立された。さらに、2017 年4 月に1 領域が加わり、4 領域で構成されている。

・ライフ・ナノバイオ領域
・グリーン・環境領域
・感性認知支援領域
・X線・光赤外線宇宙物理領域

戦略的研究部門では、領域内や部門・領域を越えた研究プロジェクトの企画運営を行うため全学組織として設置したURA オフィスとの連携によりダイナミックな研究展開を目指している。

 
ライフ・ナノバイオ領域

がん細胞が正常細胞と比べ軟らかいこと、緑茶カテキンが、がん細胞を硬くし転移を抑えることが分かってきた。細胞の硬さを指標として、がん診断とがん転移メカニズム・抑制の新原理を確立していく。

 
グリーン・環境領域

遺伝子工学・代謝工学を利用した有用植物の作出と、植物の栽培に適した土壌の研究を組み合わせることで、植物を使った二酸化炭素削減や土壌汚染問題克服を実現し、地球規模の環境保全に貢献していく。感性認知支援領域人の生活の質(QOL)の向上を目指し、人間と機械とのインタラクションの解明とその生活支援システムへの応用に関する先導的研究を行っていく。

 
X 線・光赤外線宇宙物理領域

恒星・惑星の誕生から、その死である白色矮星・中性子星・ブラックホールまで、太陽系・銀河系・銀河団規模に広がるさまざまな天体からのX 線や光赤外線を観測して、宇宙で起こる物理現象を探究していく。

先端産業国際ラボラトリーで
産学官連携イノベーションを創出

埼玉大学先端産業国際ラボラトリーは、産学官金連携による研究・開発協働、製品化・事業化等を見据え、大学と産業界・地域社会とのインターフェイスとして、共創型ワークショップや先端産業インキュベーションを通じてイノベーションを実現するため、2016 年4 月に設置された。

共創型ワークショップ・スペースでは、産学官金共創ネットワークを形成し、異業種・異分野間、産・学・官のセクター間、技術や学術の領域間などの既存の壁を越えて、文理融合によるシナジーが発揮される人的ネットワークや研究・開発の場を提供している。また、先端産業インキュベーション・スペースでは、地域特性を活かした知を活用し、グローバルな視点で長期的視野を持った基礎研究から社会の要請に応える応用研究までの創造性豊かな研究開発・試作・製品化・事業化を一貫して行い、新産業創出・標準化事業を通じて広く社会に還元することにより、研究開発を通じた産業人材育成で地域社会の発展に貢献している。
現在、先端産業分野別に「ヘルスケア・イノベーション研究ユニット」および「メディカル・イノベーション研究ユニット」の二つの研究ユニットを設置している。

ヘルスケア・イノベーション研究ユニットでは、遠隔医療やヘルスケア支援のためのIoT 技術、AI 技術、非侵襲生体情報計測、人に優しい機器設計のためのヒューマンインターフェイス技術、ブレイン・マシン・インターフェイス技術等の研究開発を行い、先進ヘルスケア分野の高度化に貢献している。

メディカル・イノベーション研究ユニットでは、次世代抗体スクリーニング技術、蛍光発光技術、多価化合物によるクラスタ―化技術等を用いて感染症やがん他分野において、高感度、迅速および簡便な診断薬や検出キットの開発を行い、メディカル・イノベーションに貢献している。

これらの研究ユニットでは、医療・医薬・健康・介護関連の産学官のそれぞれの研究者・技術者・経営者・学生らが、既存の組織の壁を越えて結集し、共創の場で先端産業の推進を行っている。

2016 年6 月17 日に第1回ヘルスケア・イノベーション・ワークショップを開催し、本格的に活動を開始した。ワークショップには、産業界、自治体、そして大学の関係者など多数の方々にご参加頂き、積極的な議論や交流が深められ、ワークショップ後にも継続して新たな研究開発や事業化を検討している。2016 年度においては、ヘルスケア・イノベーション・ワークショップ、ロボット開発人材育成セミナーなど、延べ1,000 名超の方々にご参加頂いた。2017 年度も引き続き、健康管理やQOL(Quality of Life)を向上させるためのヘルスケア機器関連技術、AI やIoT などのヘルスケア関連技術、マーケティングやサービス戦略、グローバル展開について議論していく。

先端産業インキュベーション・スペースについても整備を進めており、既に10 社を超える多くの企業の方が活用を開始し、先端産業国際ラボラトリーで開発されたAI 先進ヘルスケアシステムなどを活用し、ヘルスケア機器関連の研究開発・製品化・事業化・標準化を目指している(写真2)

写真2 インキュベーション・スペースでの様子

先端ラボでは、企業と大学の研究室が1 対1で共同研究するだけではなく、大学が核になり強みが異なる複数の企業をコーディネートし、先端産業インキュベーション・スペースにて異業種連携や新分野展開支援を行いながら、新たな製品の企画、研究開発、製品化・事業化・標準化を一貫して取り組み、共創の場における実践的な人材育成や新たな事業化を目指しており、ここからイノベーションを起こし、地域貢献をしたいと考えている。

埼玉大学へのアクセス

埼玉大学は、埼玉県さいたま市桜区に位置し、JR 京浜東北線「北浦和駅」、JR 埼京線「南与野駅」、東武東上線「志木駅」などからバスなどでアクセスできる。


[<フェロー>綿貫 啓一(埼玉大学)]


 

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