特集 機械工学のフロンティアを切り開くバイオエンジニアリング
「細胞スケールの流れ」の研究動向
はじめに
私は学生時代から生物流体の研究をしているが、今までつまらないと思ったことはない。よくよく考えてみれば、流体力学の研究者は皆、200年ほど前に導出されたナビエ・ストークス方程式を解き続けているのであるから、そろそろ解くべき問題もなくなり、研究に飽きてしまっても不思議ではない。さらに、細胞スケールの流れのようにスケールが小さくなると、慣性の影響が無視できるため、支配方程式は簡略化されてストークス方程式となる。この式には一般解があるくらいだから、いまさら解く必要はない、と思うかもしれない。しかしながら、世の中には実に多様な生物流体が存在し、驚くべき流れの様相を示すため、研究テーマが尽きることはないのである。本稿では、私の専門分野である「細胞スケールの流れ」を基軸とし、バクテリアや原生生物、ヒトに関する最近の研究動向と今後の展望について述べたい。
キーワード:特集
【表紙の絵】
「なかまを増やすロボット」
乙成 華菜 さん(当時10 歳)
このロボットは、はんしょくするロボットです。人が少ない年齢はどこかをみて、大人でも自分より年上じゃなければうむことができ、少子化を防げます。(一部抜粋)