特集 機械工学のフロンティアを切り開くバイオエンジニアリング
補助循環に関わる血液ポンプの研究開発の動向
1.はじめに
心疾患は日本人の死因の第2位であり、その死亡者数は年間およそ20万人である。心疾患にはさまざまな病態があり、その中でも心臓のポンプ機能の低下により全身に充分な血液を供給できなくなる心不全による死亡者数は、年間およそ7万人である(1)。
心不全の患者には、軽・中等症の場合には、薬物療法などがとられるが、重症の場合には、大動脈内バルーンパンピング(IABP: intra-aortic balloon pumping)、経皮的心肺補助法(PCPS: percutaneous cardiopulmonary support)、補助人工心臓(VAD: ventricular assist device)などの補助循環療法がとられる。大動脈内バルーンパンピングは、バルーンカテーテルを胸部下行大動脈に挿入し、心拍に同期してバルーンを収縮・拡張させることで冠血流を増やす方法である。補助循環療法の中では最も手技が簡単であり、治療件数は年間およそ2万例である。また、経皮的心肺補助法は、遠心ポンプと膜型人工肺を用いた人工心肺装置により、大腿静脈から右心房までカテーテルを挿入して心肺補助を行う方法である(図1(a))。大動脈内バルーンパンピングよりも強力な循環補助であり、治療件数は年間およそ6千例である。そして、補助人工心臓は、心臓の近くに人工心臓を設置して循環補助を行う方法である(図1(b))。大動脈内バルーンパンピングや経皮的心肺補助法で改善しない場合、心臓移植に向けての待機治療として用いられており、治療件数は年間およそ200例である(2)(3)。
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【表紙の絵】
「なかまを増やすロボット」
乙成 華菜 さん(当時10 歳)
このロボットは、はんしょくするロボットです。人が少ない年齢はどこかをみて、大人でも自分より年上じゃなければうむことができ、少子化を防げます。(一部抜粋)