エンジニアリング教育の達成度評価 ~テスト問題バンクの取り組み~
第4回 工学分野におけるテスト問題開発:OECD-AHELO(1)
1.OECD-AHELOの概要(1)~(3)
国境を超えた人の移動が活発化するなかで、高等教育において修得した単位や学位の等価性や国際通用性を保証する仕組みへの国際的関心が高まっている。このような背景の下、経済協力開発機構(OECD)によって「高等教育における学習成果調査 (Assessment of Higher Education LearningOutcomes、AHELO) 」が構想された。そして、このようなことが実施可能であるかどうかを検証するためのフィージビリティ・スタディ(以下、AHELO-FS)が、2009年から2012年にかけて17 か国の参加のもとに実施された。対象は、分野横断的な「一般的技能」および専門分野「経済学」「工学」で、日本は工学分野に参加した。AHELO-FS では、第一に、各国の多様性と特殊性をふまえつつ、国際通用性をもつ学習成果アセスメント・ツールを作成することが可能なのか、第二に、高等教育機関と学生の参加を促し、アセスメントを実施することは可能なのか、が検討された。テスト・調査票の開発およびテスト実施マネジメントに係る委託事業は、豪州教育研究所(Australian Council for EducationalResearch、 ACER)を代表機関とするAHELOコンソーシアムが受託した。AHELOコンソーシアムの事業は、次の四つのグループによって分担された。すなわち、「一般的技能」は米国のCAE(Council for Aid to Education)、「経済学」分野は米国のETS(Educational Testing Service)、「工学」分野はACERとともに日本の国立教育政策研究所(NIER)およびイタリアのフィレンツェ大学(UF)、「背景情報調査」はオランダのCHEPS(Centre for Higher Education Policy Studies)および米国のCPR(Center for Postsecondary Research)が分担し、テスト・調査票の開発、各国における実査のマネジメント、実査にもとづく妥当性と信頼性の検証作業が遂行された。コラム1 は、「汎用的能力アセスメント」の問題例の抜粋である(1)。汎用的能力については、文化的な背景の違いが影響することや、広範な学習の成果をこのような形で評価できるのか、などの疑問があり、国際的に標準化することへの難しさが指摘された。
キーワード:エンジニアリング教育の達成度評価
【表紙の絵】
「博士ロボ工場~ロボットが働く時代~」
村越 和くん(当時13 歳)
ロボットは人間が入れない危険な所に行き、人間の代わりに働いたりしてくれます。また、自動車工場などではすでに使われてます。そんなロボットが工場にいればいいなと思いかいてみました。
でもロボットだけではだめなので絵の中には人間はいないけど、いつか会話などしながら働けたらなと思いました。