特集「つながる工場」のインパクト
インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ 日本機械学会の研究分科会からのイノベーション
1.日本版インダストリー4.0
2015年6月13日、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)の設立記念シンポジウムが開催された。日本を代表する製造業53社が新しいデジタル時代に対応すべく、つながるものづくりを企業の枠を越えて実現するためにスタートした団体は、すでに会員200社を超え、日本の第4次産業革命の中核を担う存在になりつつある。この流れの最初のきっかけを作ったのは、ほかならぬ日本機械学会であり、生産システム部門が中心となって進めていた活動である。まさに、産学官の連携の中で生まれたイニシアティブであるといってよい。
いまや海外にも知られる存在となったIVIは、このように学が主導してできた団体であるという点では、特異な例といえる。しかし、振り返って見れば、このことがIVIのひとつの強みである。きわめてニュートラルでありながら、競争領域にも踏み込んだ産業界のニーズに立脚し、スピード感のある対応が可能となっている理由は、こうしたしがらみのないフリーハンドな立ち位置による。
きっかけは、設立の1年前である2014年の3月に、文部科学省科学技術・学術政策研究所と本会とで実施した検討会である。社会的課題に対する問題意識として取り上げられたテーマの一つである「システム技術の強さの出し方、知的財産戦略、国際標準化戦略、コネクト化・オープン化」ある。オープンイノベーションが叫ばれる中で、これまではでの議論が、その後も個人的なネットワークの中で引き継がれ、経済産業省の若手メンバーを巻き込んだ議論を経て、産学官の有志による意見交換会が形成された。初回の会合は同年の5月である。
ドイツのインダストリー4.0のコンセプトと新たな取り組みが日本でもメディアに取り上げられ始めたころ、2度の会合を経て6月初旬に提出されたのが、「日本的な“つながる工場”実現へ向けた製造プロセスイノベーションの提案」である(1)。1カ月という短期間でまとめた背景には、そこに集まった有志が共有する強い危機感と、そして同時にある種の野心的な思いも重なっていた。「日本のものづくりは当面は強いだろうが、これからのデジタル化の波に乗れなければ未来はない。そうであれば、むしろ、こうした流れをものづくりの側からしかけられないか」。米国では、インタストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)が設立され、製造業とIT関連企業とががっぷり四つに組んだ新しい産業形態に期待が集まり始めていた時期である。製造立国である日本の立ち位置はどこなのか、10年、20年先を見据えたコンセプト、あるいはビジョンはないのか、といった声が、日に日に新聞や雑誌の紙面に掲載され始めていた。
その後、本会生産システム部門では、2014年10月から正式な研究分科会「インターネットを活用した『つながる工場』における生産技術と生産管理のイノベーション研究分科会(P-SCD386)」がスタートし、2015年3月に提出された中間報告を受けて、先述のとおり、6月のIVI設立に至った。その間、国内では、インダストリー4.0への注目が一気に高まり、数多くの視察団がドイツへ向かい、多くの書籍も出版された。
キーワード:特集
【表紙の絵】
「博士ロボ工場~ロボットが働く時代~」
村越 和くん(当時13 歳)
ロボットは人間が入れない危険な所に行き、人間の代わりに働いたりしてくれます。また、自動車工場などではすでに使われてます。そんなロボットが工場にいればいいなと思いかいてみました。
でもロボットだけではだめなので絵の中には人間はいないけど、いつか会話などしながら働けたらなと思いました。