日本機械学会サイト

目次に戻る

2017/2 Vol.120

【表紙の絵】
「アレルギー物質がパパッとわかるメガネ」&「モニターロボ」
伊藤 心くん(当時9 歳)

このメガネはウエアラブルコンピューターメガネの未来型で、食物アレルギーがある人のために作られました。
メガネの横の黄色い部分から赤外線が出るので、物質の持つ波長のちがいから、中に入っている物質がわかります。
そのデータをロボットに通信してモニターロボに結果を表示します。
事前に自分のアレルギー物質を登録しておけば、食べられるかどうか瞬時に判断できます。
ぼくはナッツアレルギーですが、このケーキはOK マークが出たので食べることができます。

*作者の伊藤 心くんは2016年7月15~17日開催の「口笛世界大会2016 ジュニアの部」で優勝しました。
http://whistling.jp/wwc/wwc2016/wwc2016-results
http://www.akita-u.ac.jp/honbu/event/item.cgi?pro6&849

バックナンバー

特集 新しい新幹線を創り出す技術

白國 紀行〔東海旅客鉄道(株)〕

日本が世界に誇る高速鉄道、その代名詞である「新幹線」は、1964年に開業した東海道新幹線からスタートし、1972年の岡山開業を経て、1975年、東海道・山陽新幹線として東京から博多までつながったが、最高速度は開業以来、210km/h の状態が長く続き、1986年に220km/h 化が行われた。また、1982年に開業した、東北、上越新幹線は1985年に240km/h 運転が開始された。1987年の国鉄の分割民営化以降、JR 各社において新幹線の高速化が進むこととなる。

改めて申し上げるまでもないが、鉄道技術は主として土木技術(軌道)、電気技術(電車線、信号設備)、車両技術から成る巨大なシステム技術である。高速化に関わる重要な技術課題として、例えば、騒音・振動等の環境対策、走行安定性・乗り心地、粘着(車輪とレールの摩擦)・ブレーキ、集電性能等があり、それらは軌道・電車線・車両の複数の技術部門に跨っているため、技術をシステムとして捉え、相互に連携し合って最適解を見出す必要がある。具体的には、軌道では、レール頭頂面や溶接個所の凹凸の削正、軌道整備における狂いの長波長管理等、また、電車線では架線の軽量化、トロリ線の張力アップ、さらに車両では、軌道負担を減らすための軸重、ばね下質量の軽量化、誘導電動機駆動と電力回生ブレーキの採用、機械ブレーキの容量増等を行っている。

高速化の技術開発の具体的な進め方について、車両開発の具体例を挙げると、鉄道会社のニーズに製作を担うメーカーの保有する技術を適合させるための共同開発に着手のうえ、試作品の試験装置による機能確認と耐久試験、実車に組み込んでの走行試験によるデータ取得、コンピュータの活用等による理論解析といった手順をサイクリックに繰り返すことによって、改良を重ね、実用に資する装置、機器を完成させることとなる。すなわち、高速化の技術の発展は日本の工業界の設計、製造技術の進歩に支えられている。

また、鉄道会社においては、日々の安全、安定走行を支えるため、軌道、電車線、車両等の保守管理技術、あるいは運行技術を同時に進化させている。一例は状態監視技術である。センシング技術の飛躍的な進化と通信ネットワークによって、鉄道車両を構成する機器、装置の稼働状態を詳細に、かつリアルタイムで監視できるようになったことから、監視データを蓄積、解析することによって故障の予兆を高精度で推測することが可能となってきており、さらなる安全・安定輸送の確保、検査・修繕の効率化が図られる。

本特集においては、主たる読者である機械技術者のご関心の高い領域を中心にまとめさせていただいた。まず、東海道新幹線の高速化における車両技術の開発の経緯を紹介する。次に、新幹線の技術の発展形を随所に取り入れた超電導磁気浮上式鉄道(以下超電導リニア)技術の概要、そして、建設が始まった超電導リニア方式を適用した中央新幹線の計画の概要を紹介する。

キーワード: