日本機械学会サイト

2019/4 Vol.122

【表紙の絵】
魚が空を飛べる「まく」をつけるそうち

山本 波璃 さん(当時9歳)

魚は水の中でしか、生活ができないけれど、 このそうちでまくの中に入ると、水の外で も生きていけます。そうすればいっしょに 魚たちと遊べます。

バックナンバー

ソフトロボット学

ソフトロボット学がめざすもの

鈴森 康一(東京工業大学)

有史以来、科学技術はひたすら「パワー」と「確実性」を追い求めてきたとは言えないだろうか。我々エンジニアの多くは確実かつ力強い動作を求め、頑丈な機械設計、強い材料開発、高速で確実な情報処理などを追求してきた。 しかし近年、機械・電子、材料科学、情報科学など複数の異なった分野で、「や…Read More

ソフトロボット学

ソフトロボティクス理論的枠組みの構築に向けて

飯田 史也(ケンブリッジ大学)

はじめに 最近5年ほどのソフトロボット研究の進展は目を見張るものがある。この分野の研究はロボット工学の専門雑誌で多数発表されているに留まらず、ScienceやNature等のような学際分野の研究者をターゲットとしたトップジャーナルにも頻繁に論文が採択されるようになってきた。筆者ら…Read More

ソフトロボット学

ソフトロボット学への産業界からの期待

櫻井 良〔(株)ブリヂストン〕

ソフトロボットの役割と期待 人とロボットの距離が近くなっている。従来のロボットは、生産性の向上や、省人化を目的とし、工場の中で人よりも大きな力で、高速で同じ作業を効率的に繰り返すなど、人がなしえない作業を実現するタイプが主流だった。そのため、安全の面などから人と隔離されて使用され…Read More

ソフトロボット学

体幹の“しなやかさ”をつくる

望山 洋(筑波大学)・郡司 芽久(国立科学博物館)・新山 龍馬(東京大学)

はじめに ソフトロボティクスは「柔軟材料に特有の機械的・電気的・化学的性質を積極的に利用したロボットシステムに関する学問分野」である(1)。生物の身体の多くの部分は柔軟材料で構成されているので、生体はソフトロボットの手本となり得るが、生物そのものを複製することは不可能である。そこ…Read More

ソフトロボット学

「成長」する機械をめざして

清水 正宏(大阪大学)・梅舘 拓也(東京大学)・細田 耕(大阪大学)・小椋 利彦(東北大学)

はじめに 本研究の目的は、生きている細胞を部品とするロボットを構築することで、成長するバイオソフトロボットを実現することである。機械自体が自己改変する身体的可塑性を有することが大きな特徴である。生物は、自己の運動が機械的な刺激を作り出し、それに細胞が生理学的また物理学的に応答して…Read More

ソフトロボット学

やわらかさが生み出す飛翔と遊泳の運動

田中 博人(東京工業大学)

飛翔と遊泳における身体のやわらかさ やわらかい身体の変形と流体力の相互作用 移動は、ロボットにおいても生物においても、身体に求められる主要な機能の一つである。その中で飛翔と遊泳という移動方法では、身体が空気または水という流体の中を、地面などの他の固体と接触することなく、身体に働く…Read More

ソフトロボット学

自在に変形する太陽電池

福田 憲二郎(理化学研究所)・藤枝 俊宣(東京工業大学)

太陽電池がソフトロボットに果たす役割 ソフトアクチュエータを利用したソフトロボットのアプリケーションを駆動させる際には、大なり小なり電力が必須である。環境から電力を得る「エナジーハーベスティング」技術が近年盛んに注目を集めており、この技術とバッテリーを組合せた電力供給システムをフ…Read More

ソフトロボット学

イオン交換膜が実現するソフトモーション

難波江 裕之・鈴森 康一(東京工業大学)・安積 欣志・堀内 哲也(産業技術総合研究所)

はじめに 本研究課題では、新学術領域「ソフトロボット学」において「しなやかな動き」創出のための、ソフトアクチュエータに関する研究をテーマとしている。電圧印加によって変形する電気活性高分子や熱による形状記憶合金・ポリマーや流体駆動アクチュエータなどさまざまな原理のソフトアクチュエー…Read More

ソフトロボット学

トーラス駆動型の究極の柔軟ロボット機構を創造する

多田隈 建二郎(東北大学)・古川 英光(山形大学)

はじめに 柔らかい身体を有するロボットを構築する際、従来の「硬い」ロボット機構における従来型の設計・作製方法が必ずしも有効とは限らず、接着や自己組立などの新たな設計・具現化手法を新規に適用・開発していく必要がある(1)。 本研究では、全方向に分岐・分裂が可能な膨張式の枝分かれロボ…Read More

ソフトロボット学

ソフトロボットにおけるPhysical Reservoir Computing

中嶋 浩平(東京大学)・竹井 邦晴(大阪府立大学)

近年、機械学習の分野において、物理系のダイナミクスそれ自体を計算資源として活用する情報処理技術、Physical Reservoir Computing(PRC)が提案された。この手法に基づいて、やわらかい素材が変形する際の高次元で複雑なダイナミクスがきわめて高い情報処理能力を有…Read More

ソフトロボット学

運動パターンを創り出すマテリアルと知能の設計

前田 真吾(芝浦工業大学)・澤田 秀之・重宗 宏毅・三輪 貴信(早稲田大学)

機械の複雑さの壁 ロボットは、機械、電気、情報、通信の分野を中心に技術を統合して組み上げられた、メカトロニクスを基盤としたシステムである。産業分野では、そのメカトロニクス技術を用いて「精密」「確実」を追及し、さまざまな成果を挙げている。工場内での活躍だけでなく、人間と機械が共存す…Read More

ソフトロボット学

生物リズム・パターンのソフトロボティクスへの応用

伊藤 浩史(九州大学)・杉 拓磨(滋賀医科大学)・永井 健(北陸先端科学技術大学院大学)

はじめに ソフトロボティクスの一つの目標はやわらかなマテリアルに複雑な情報を処理できる知的な機能を実装することである。これは崇高な目標であるが、人工物でなければ身近な例がある。生物である。電気の供給もCPUもない生物が進化の過程を経て獲得したやわらかい素子による知的機能はソフトロ…Read More