1.創生・発展・不況期(大正~昭和初期)
1876年,明治政府の造船所民間払下げ以降,日清,日露,および第一次世界大戦を経て日本造船業は急速に発展し,大正初めには進水量においてアメリカ,イギリスに次いで世界第3位を占めるにいたった.しかし,大戦の終結後は造船景気は急速に衰え,わずかにディーゼルエンジンの採用(・音戸丸・)やスクラップ・アンド・ビルド方式による政府の助成金による建造が行われた.
2.戦時・復興・躍進期(戦時~)
日本が戦時体制に入り艦艇,商船の建造が急速に増大し,空前のスケールを誇る戦艦「大和」「武蔵」が建造された.そして戦後の低迷,復興を経て,それまでに蓄えた技術力,設備の近代化,合理化により1956年には日本の進水量は一躍世界一になるまでにいたった.その後も,動乱や戦争のためスエズ運河の閉鎖によって,スエズ運河に依存しないタンカーなど超大型船の需要が増大し日本は常に巨大化のリーダシップをとって,1973年には造船ブームとなった.
3.構造変革期(オイルショック後~現在)
しかし,同年秋に起こった石油ショックによって造船業も一変した.船体の巨大化,主機関の高出力化,および船速の高速化の波は頭打ち,反対に省エネルギー船,省燃費機関が指向されはじめた.熱効率50%を超える機関も出て,低速二サイクル機関,中・高速機関共,120g/PS・hレベルの燃料消費率を達成し,中でも二サイクル機関では,低速,超ロングストローク化が進み120g/PS・hを切る機関も出現している.
また,二重反転プロペラ搭載船(写真1),純国産技術のLNG船をはじめ日本はその技術力においても世界のリーダシップをとっている.
4.将来の船
貨物船や客船に対しての高速化の要望はますます強くなると思われる.次世代高速貨物船「TSL」の空気浮上式(図1,写真2),水中翼浮上式それぞれの実験艇実航海試験が実施されており,物流モーダルシフトの中核として注目される.
環境問題では,原油流出防止からタンカーの船体構造は二重化され,またエンジン排気ガスの汚染物質(NOxなど)排出規制もはじまっており,クリーンエネルギーの利用からLNGガスだきディーゼル機関の搭載船や,水素による燃料電池電気推進船などの低公害化エンジン,低公害化船が出現するであろう.従来船においても高信頼度機関とその故障予知診断システム,通信衛星情報なども含めた高度自動運航システムを搭載した高信頼度知能化船も登場するであろう.また,海上空港など超大型浮体構造物「メガフロート」,発電や造水プラント・バージなどの新しい用途の船も実現すると思われる.