固体ではなく流体,すなわち気体あるいは液体を用いて潤滑するという字義通りの意味を表す場合もあるが,動圧軸受や静圧軸受の作動原理であるhydrodynamic/hydrostatic lubricationを意味する場合が多い.軸と軸受が直接固体接触しながら滑ったり転がったりすると摩擦抵抗が大きくなり,焼付きや摩耗などの表面損傷も激しくなるので,軸と軸受の固体壁面が充分な厚みの流体膜で隔てられて直接接触しないようにする必要がある.こうすれば厚い流体膜のせん断抵抗は通常極めて小さいので摩擦抵抗を小さくすることができ,表面損傷も軽微となる.しかし厚みのある油膜を保持するためには,負荷されている荷重に対抗できるだけの圧力を油膜中に維持しなくてはならない.この圧力を軸受外部に設置した圧力源から与えるのが静圧潤滑であり,これに対して,軸受すきまの形状を適切に設計して軸の運動そのものによって圧力が発生するようにするのが動圧潤滑である.動圧潤滑の場合,流体潤滑膜内に発生する圧力は,流体の粘度,すきま形状,壁面の運動速度を与えてレイノルズ方程式を解くことより理論的に求められる.潤滑剤としては鉱油を主体とする油,水などの液体,空気やヘリウム,炭酸ガスなどの気体が多い.高速,高荷重の運転条件では流体潤滑が必須である.