磁気テープ装置では,針状の合金磁性粉を塗布したメタルテープが多用されているが,さらに高密度記録を進めるには磁性粉の微粒子化が必須である.しかし微粒子化を進めると保磁力が減少し,高密度記録を実現できないことが明らかになった.そこで新たに開発されたのがバリウムフェライト磁性粉である.保磁力の起源がその結晶異方性にあり,磁性粉自身が酸化物のため磁気的・熱的にも安定である.粒子体積1,000~2,500 nm3の領域で高い保磁力が得られた.この磁性粉を塗布したテープがバリウムフェライトテープであり,LTO-7(リリース;2015年),LTO-8(リリース;2017年)に搭載された.なおバリウムフェライト磁性粉の飽和磁束密度は合金磁性粉の飽和磁束密度に比べて小さいため,磁気ヘッドの再生出力が低下する.これを補償するため,磁気テープ装置用磁気ヘッドには再生感度が高いTMR再生素子が初めて搭載された.また装置メーカと媒体メーカの共同研究から,1巻当り220 TB(テラバイト)の大容量記録の実現が可能であることが明らかになった.新たに研究に着手したストロンチウムフェライトでは,400 TBの大容量記録の実現性があることが明らかになっている.