デジタルカメラに使用されている撮像素子(イメージセンサ)には,フォトセンサ(フォトダイオード)の上にカラーフィルタを介してマイクロレンズアレイが形成されている.マイクロレンズは,もともとは光をフォトセンサ上に集光して光の利用効率を高めるためのものであったが,光軸がわずかに傾いて入射する場合には,入射光の傾きを増幅して,フォトセンサ上に投影する働きがある.この働きを利用して,二つのマイクロレンズと二つのフォトセンサを組にして,この間に瞳分割用のマスクを設置することにより,入射光が外側から来るのか(前ピン),内側から来るのか(後ピン),の識別が可能となる.合焦点では,二つのフォトセンサの出力は同じになるため,二つのフォトセンサ出力の差と入射方向から,オートフォーカス(AF)の制御信号を得ることができる.この一対のフォトセンサは,撮像面内に埋め込まれたAFセンサとして機能し,撮像面内に多数配置されている.AFセンサとして使用されるフォトセンサからは,被写体の画像信号は得られないため,この位置の画素信号は,周囲の画素を用いた内挿値などが用いられる.一対のフォトセンサを使う代わりに,一つのマイクロレンズに入射する光を二つのフォトセンサで受光すれば,二つのフォトセンサが瞳分割と同じ役割を持つことになるため,これよりAF信号が得られ,また二つのフォトセンサの出力を合算すれば,画素信号も得ることができる.