人々が安全,健康,利便,快適な生活を営めるように支援するロボット.広義の福祉ロボットとしては,医療施設における看護介助ロボットやリハビリテーションのための機能回復訓練ロボットなどのような一部の医療ロボットシステムや,ゆとりをもって余暇を充実させるためのアミューズメントロボットなども含む.他方狭義では,高齢者や身体障害者の低下した運動機能や感覚機能の補助や補てんを目的としたロボットシステムをさすことが多い.特に家庭・施設・就労現場での,作業や移動といった運動機能とコミュニケーション機能との両面から日常生活動作(ADL: activities of daily life)を支援する自立支援ロボットや,周りの介護者の負担を軽減するための介護ロボットの必要性は,社会の急激な高齢化による被介護人口の増加と介護人口の減少に伴ってますます大きくなっている.これらの社会的な背景を踏まえて,現在さまざまな種類の福祉ロボットに関する研究開発が試みられている.例としては,日常生活に不可欠な食事や入浴,排せつの自立や介助を支援するロボットや,それらに伴う移動動作に対してパワーをアシストする歩行支援ロボットや移乗・移載のためのリフタや抱上げロボットなどがあげられる.福祉ロボット開発研究における重要な要素技術としては,特にインタフェースがあげられる.基本的には一般個人が力やパワーをアクティブに発揮する機械システムを直接操作する場面が多くなるため,誤動作による事故防止の観点からも,さらに適切なパワーアシストシステムを構築する観点からも,信頼性が高く人間との親和性の良いヒューマンインタフェースが不可欠となる.開発や普及に向けた課題としては,ニーズの見極めやコスト算出の困難さ,個々のユーザに応じたカスタマイズを行うバックアップ体制の組織化やインフラ整備などさまざまな視点から問題が指摘されている.