極限環境下や遠隔地などで人間が直接作業できない場合の遠隔操縦の一手法としてマスタスレーブマニピュレータがある.操作者が操る多関節型機構をマスタアームと呼び,実際の作業現場にある機構をスレーブアームと呼ぶ.操作者が操るマスタアームの動きと同じ動きをスレーブアームで再現することにより,遠隔作業を行うことができる.バイラテラル制御は,このマスタスレーブ型遠隔操縦系の制御法の一つでありバイラテラルサーボとも呼ばれる.マスタアームとスレーブアームの制御系(サーボ系)が,双方に目標値を出し合いながら結合していることから,このように呼ばれており,結合した系全体をバイラテラルサーボ系と呼ぶ.図にバイラテラル制御の代表的な三つの方式である対称型,力逆送型,力帰還型を示す.対称型では両方に位置制御系を配置し,相手側のアームの位置が目標値となるような閉ループ系を構成しており,力逆送型と力帰還型では,スレーブ側で検出された力を目標値とするような力制御系をマスタ側に構成している.バイラテラル制御に対して,マスタ側に制御系を置かず単にマスタアームからの目標値をスレーブ側の制御系に送るだけの方式をユニラテラル制御と呼ぶ.バイラテラル制御の利点は,単に操作者の動作指令をスレーブ側に送るだけでなく,スレーブ側の作業状況が力感覚として操作者に伝えられる点であり,これにより作業能率が飛躍的に向上する.