燃料電池は電解質を介した2種の電極を用い,反応物として,正極(空気極)に酸素または空気,負極(燃料極)に水素や炭化水素などの燃料を外部から供給し,生成物(H2O,CO2など)を逐次外部に除去して連続的に発電する.また,反応物の供給を止めると発電しないため,電池よりむしろエネルギー変換器ともいえる.燃料電池発電は次の特徴がある.①熱エネルギーや運動エネルギーの過程を経ない直接発電のため,小規模で高い発電効率が期待できる.②窒素酸化物やばいじんなどの排出が少なく,騒音や振動の少ない優れた環境性をもつ.③冷却用に多量の海水,河川水を必要とせず,都市部に設置可能である.④発電に伴い発生する熱を利用し,給湯,地域冷暖房と組合せてコージェネレーションとすることにより,総合エネルギー効率の向上が期待できる.
燃料電池は,電解質によって,アルカリ形燃料電池(AFC),リン酸形燃料電池(PAFC),溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC),固体電解質形燃料電池(SOFC),固体高分子形燃料電池(PEFC)などに分類できる(表).いずれも単電池の出力電圧は低いため,実用化にはセパレータを介し直列に多数のセルを積層した燃料電池スタックとして使用される.図にリン酸形燃料電池発電プラントの基本構成を示す.機能別に次のサブシステムに分類できる.
1. 燃料処理系:原燃料ガスと別に製造する蒸気と熱により改質・変成を行う.
2. 空気処理系:空気を導入する部分.
プラントの高効率化を目指すにはより高圧が必要となり,空気圧縮機が使用される.
3. 熱処理系:改質に必要な蒸気の生成,さらに冷却用水(または空気)を含めてプラント全体の総バランスを制御する.
4. 燃料電池スタック:燃料処理・空気処理系から得られた改質ガス・空気を導入して発電する.なお発電時に発熱するため,冷却用水(または空気)が電池内を循環し,この熱を熱処理系へ送りプラント全体の温度制御を行う.
5. 水回収系:電池内で生成される水,燃料処理系から回収される余剰水および冷却水は,すべて水回収系へ戻され,脱気・脱イオン・ろ過され,純水として再びプラントへ供給される.
また上記のほか,電池本体で発電される直流電力を交流に変換する直交変換装置,プラント全体の制御・保護を行う監視・制御装置,窒素ガス,制御用空気などの貯蔵装置がある.