物質の[安定]平衡状態に対して定まる量.変数と見る場合には状態変数という.温度,圧力,体積,内部エネルギー,およびエントロピーなどである.逆にいえば,これら状態量の一つの組で指定される物質の系の存在の仕方が一つの[熱力学的]状態である.状態量の変化は,変化の経路にはよらず,変化の始めと終りの状態のみによる.熱や仕事は変化の経路に依存し,状態量ではない.一成分の物質すなわち純粋物質の閉じた系の2自由度の変化を状態量xとyで記述する際に,\(M\left( {x,y} \right)dx + N\left( {X,y} \right)dy\)に対して\[{\left( {\frac{{\partial M}}{{\partial y}}} \right)_x} = {\left( {\frac{{\partial N}}{{\partial x}}} \right)_y}\]が成り立つならば,\(M\left( {x,y} \right)dx + N\left( {X,y} \right)dy\)は完全微分であるといい,これが一つの状態量Zの変化を記述する.このとき\[M = {\left( {\frac{{\partial Z}}{{\partial x}}} \right)_y},\;N = {\left( {\frac{{\partial Z}}{{\partial y}}} \right)_x}\]であり,Zの任意のサイクル的経路に対する周回積分は0になる.上の系において\(dU + pdV\)は完全微分ではないが,\(\left( {dU + pdV} \right)/T\)は完全微分になり,状態量エントロピーの変化を定義する.この場合の1/Tを積分因子という.