温度差あるいは濃度差に起因する浮力の強さを示す無次元数であり,g:重力加速度,β:体膨張係数,l:代表長さ,ν:動粘性率,λ:熱伝導率,(Th-Tc):伝熱面温度差(あるいは熱流束qが規定されるときは,q/(l/λ)を用いて,Gr=gβ(Th-Tc)l3/ν2と定義される.低プラントル数においては,浮力が慣性力とバランスし,また伝熱面の近傍の速度の減速は粘性せん断力に基づく.したがって,低プラントル数の速度分布の最大値は,熱拡散係数とは関係なく動粘性率と関連し,速度を最大とする位置までの伝熱面からの距離δmはグラスホフ数を用いて\({\delta _m}/l \approx 1/{G_r}^{1/4}\)と表される.グラスホフ数の増大は自然対流の速度を増大させ,最大速度位置を壁に集中させる.この低プラントル数においては,壁の極近傍を除けば,温度境界層内で粘性力が無視されるので,温度境界層厚さ,したがって熱伝達特性はGrPr2=RaPrで規定される(パラメータに粘性係数が影響しなくなる).またプラントル数Prが大きい(粘性の高い)流体においては,速度境界層は温度境界層をはるかに超えて厚くなり,最大速度には伝熱面近傍の熱拡散係数が影響する.このため浮力と粘性力の釣合いに熱拡散係数が関与し,レイリー数と呼ばれる無次元数Ra=GrPrが温度境界層厚さδTを規定する\({\delta _T}/l \approx 1/{R_a}^{1/4}\).したがって高プラントル数流体においては,レイリー数Ra=GrPrが熱伝達特性を規定する.