分子あるいは原子の2個以上の集合体を分子クラスタ，原子クラスタといい，広い意味では分子も原子クラスタということもできるが，一般には電子状態の結合がない（弱い）集合体をさす．したがって，その結合力はクーロン力，双極子力，ファン・デル・ワールス力によるものがおもである．クラスタの構成粒子（モノマ）が2個のものをダイマ，3個をトリマ，…，n個をn-merという．クラスタは気体-液体，気体-固体，液体-固体の相変化過程の中間体であるが，表面の粒子が存在することと内部自由度のために，バルクの凝縮相とは異なった物理的化学的特性を示す．すなわち，表面活性が強く触媒作用や蒸着性がある，融点が低く低温で焼結性が良い，保磁力・飽和磁化の高い磁性を示す，超電導遷移温度が上昇する，赤外領域で強い吸光性を持つなどが知られている．クラスタの生成法は，液体・固体の蒸発・分解・分裂によるもの，気体からの凝縮・凝集によるものがあり，後者には気体あるいは蒸気が単に拡散・冷却しクラスタ化するeffusive法と，ノズルを通して断熱膨張冷却する方法がある．これらのクラスタは凝縮の素過程や凝縮中間相の物性の研究に重要であるばかりでなく，応用技術としては，凝縮相を含むために高エネルギービーム源として利用できる，物理化学的な活性を利用した薄膜形成，超微粒子の製造，通常合金を作らない金属間の人工合金，通常不可能な表面処理などが考えられている．