流体管路(系)においては,管路に接続される水力機械,バルブ(切換弁など)やアクチュエータの作動(制御動作)に基因して,管内流体の圧力・流速が非定常挙動を呈する.これを流体過渡現象といい,通常,過渡特性のみでなく周波数特性である脈動も含める.水力機械系でのいわゆる水撃も油圧系での油撃も含まれる.強度の関連から,圧力の過渡的上昇に留意する.流体過渡現象は,管路に接続する機器により境界条件が定まるから,機器の非定常特性(作動特性)を把握しておく必要がある.この現象が問題とされる状況では,管内流体の特性のうち,慣性と圧縮性とが波動伝ぱに主たる影響を及ぼし,粘性は波形の減衰に寄与する.液体の圧縮性の算定では,気泡の存在に留意する.粘性(エネルギー損失)を無視した扱いが波動理論である.損失の考慮には,定常流の損失を形式的に導入する場合と,非定常流としての損失を解析する場合とがある.流れが乱流の場合は前者に限られるが,層流では後者もよく行われる.通常の油圧システムでは,管路を圧縮性のみを考慮した集中定数系として扱い,必要に応じ慣性や損失を付加する.