境界層は,層流状態と乱流状態とでは壁面せん断応力が著しく異なり,また境界層がはく離すると物体に作用する流体力などに大きい影響を及ぼす.そのため境界層制御は,境界層厚さの成長の抑制,乱流遷移点の移動,はく離の防止などを目的として行われ,具体的には次の方法がある.①層流翼形:境界層の遷移点ができるだけ下流側にあるように翼形を設計する.摩擦抵抗は3分の1程度に減少する例がある.②トリップワイヤ:層流境界層の中に細い針金を挿入しじょう乱を与えることによって,乱流遷移を促進して層流はく離を回避する.遷移点の変動を止めるためにも用いる.③境界層の吸込み:固体表面を多孔質材料にするかあるいはスリットを設け,壁近くの速度の遅い流体を吸込むことにより,速度分布を安定な形状に変え,境界層厚さの成長を抑える.その結果,乱流遷移点は下流に移動し,はく離も回避することができる.④スリットからの吹出し:スリットから壁面に沿って流体を吹出し流体にエネルギーを供給し,はく離を防ぐ.翼のフラップは,吹出しの代わりに腹面側の圧力の高い流体を背面側に導いて同様の効果を得るものである.これによって高揚力,低抗力が得られる.⑤ボルテックスジェネレータ:圧力上昇する広がり流路などの入口に,迎え角をもつ小さい板を垂直に多数取付けて渦を発生させ,その混合作用によりはく離を防止する方法である.