材料の溶接に対する適合性のことをいう.溶接性には溶接施工時の欠陥の発生しやすさおよび作業性に関する溶接性と,溶接部の使用性能に関する溶接性がある.前者の溶接性には,割れや気孔など溶接欠陥に対する感受性,溶接金属の形状や外観などが評価要素となる.特に,鋼の溶接部では低温割れ性と関連の深い,材料の硬化性が溶接性の一つの指標となる.HAZの最高硬さの予測には炭素当量や溶接時の冷却速度をパラメータとした各種の予測式が提案されている.また,溶接施工時の溶接性では最も問題となる耐割れ性の評価に対しては各種の割れ試験が考案されている.溶接部の使用性能に関連した溶接性は溶接部の靭性,延性,耐食性,耐疲労特性,耐応力腐食割れ性などが使用目的に応じた特性により評価される.これらの諸特性を決定するのは主に溶接部の組織もしくは残留応力であるため,その改善には溶接部の組織制御ならびに残留応力の緩和がキーポイントとなる.溶接部の使用性能の評価に関しては母材に対すると同様の試験方法が適用される.このように溶接性はさまざまな特性により評価されるが,一般にこれを総称して溶接性試験と称している.